うーん、邪魔したら悪いの分かってるんだけど愛しさが止まらない。

そんな私は小さな声で弦一郎に声をかけた。

本当は手を伸ばせば届く距離で弦一郎に触れたいんだけど、我慢してみたり。


『弦一郎?』


私が声をかけると、弦一郎は本を伏せてこっちを向いた。

その意志の強い目が大好き。



「どうした?」


『あのね?何か弦一郎が愛しいなーって思っただけ。』



こんなに私を素直にさせるのは、弦一郎だけだよ。
恋ってスゴイ。

馬鹿だなって思ったらちょっと笑っちゃう。



「な、何だいきなり。」


『思っただけだもん。』



そう言って私は下を向いてクスクス笑った。

いきなりの私の言葉に照れてどもっちゃってる弦一郎がかわいくて仕方無い。

静かな部屋に私の小さく笑う笑い声が響く。

顔を上げてみれば弦一郎は「仕方無いな。」とでも言うかのように一度ため息をついて私を見た。



『ごめんね?でも何か言いたくて。』



私が息を整えてそう言うと、弦一郎が私の横に手を着いてスっと身体を近付けた。

何?


そう疑問を抱くと同時に感じるのは弦一郎の優しい目線。

あ、どうしよう。
息止まっちゃいそう。



そう思った次の瞬間、弦一郎は私の左手を掴んで、手のひらをそのしっかりとした指先で包んでもう一度その目で私を捉えた。

や、駄目だ。恥ずかしい。

さっきまで照れてたのは弦一郎だったのに。
今度は私の番?


弦一郎はこうしていきなりするっと照れちゃう事をしちゃうから敵わない。



『げ、弦一郎…恥ずかしいって。』



だって私は左手を包まれてて…何かどこかのラブストーリーみたいで。
どこか現実味が無くて。


胸の奥がじんわり熱くて仕方無い。

そう思った瞬間、弦一郎が何を思ったかいきなり私の指にそっとキスをした。

そして口をパクパクさせる私の顔を見て言った。



「したくなったからしただけだ。

駄目なのか?」




そう悪戯に笑って。

 


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