夏は暑いものだと分かっている。暑いからこそ夏。分かっている。でも分かっていても暑いものは暑い。もう、本当に夏い。…あれ?


「弦一郎きゅーん。暑過ぎて頭がおかしくなってきたー」

「何だその呼び方は!シャキッとせんか!」

「だって暑いんだもーん。弦一郎と一緒に居るとさらに暑い気がする」

「暑い暑いとやかましいぞ。心頭滅却すれば火もまた涼しと」

「あーはいはいはい」


出たよ。弦一郎得意のこれ。夏になってから何回聞いたか分からない。でも心頭云々言ってる弦一郎だって絶対暑いはずだ。だってダラダラと汗をかいてる。


「弦一郎だって暑いでしょ?」

「…暑いと思うから暑いのだ」

「暑いもんは暑いでしょ」

「いい加減にしろ。そんな事を言い合う為にお前はここにきたのか」

「…違います」

「ならばまず起きろ。寝転んでいるばかりでは終わるもんも終わらんぞ」


はーい、と返事をしてグッと体を起こせば目に入るテキストとプリントの山。…憂鬱。一人でやってても暑いし分からないしで捗らないから弦一郎に助けを求めに来た私。だけど、弦一郎に助けを求めたところで暑いのには変わりない。だらけていると喝を入れられるけどやっぱり暑くてすぐだらける。結局捗らない。


「暑いよー」

「やかましいぞ」

「海行きたいね。スイカ割りとかしたい」

「口ではなく手を動かせ」


弦一郎は真面目過ぎる。と言うかこんなに暑いのにどうやったらそんなに集中出来るのか不思議でたまらない。話には乗ってこないものの受け答えをしながらもしっかりと弦一郎の手は動いている。尊敬する。そもそも遊んでなんぼの夏休みにこの宿題の量はありえないと思う。宿題に追われて夏休みが終わるはめになったらどうしよう。海とかプールとかスイカ割りとか楽しい事一杯あるのに。


「そんなのヤダー」

「手を動かさねば進まんぞ」


違う。そういう意味じゃないよ弦一郎。はぁ、と溜め息を吐くと弦一郎は怪訝な表情で私を見ていた。きっと弦一郎には遊ぶって考えはないんだろう。宿題とテニスと稽古と、それだけ。真面目だ。真面目過ぎる。その真面目さと今、宿題を進める為の根気を分けてもらいたい。


「とりあえずこのプリントだけでも終わらせ」

「もー、分かったよー」

「そのプリントが終わったら幸村に連絡を取ってみよう」

「幸村君に?」

「スイカ割りをしたいのだろう」

「え!」

「その前にかき氷でも食べに行くか。この調子だと今日中に終わるか分からんがな」

「きゃー!私頑張る!」


どうやら宿題に追われて夏休みが終わる事はなさそうだ。机の前にしっかりと座り直すと目の前の弦一郎は呆れたように笑っていた。練乳をたっぷりかけたイチゴのかき氷が食べたいな。よし、やる気が出てきた。もう、私ってば単純。



太陽は輝く

20090812

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