≪七夕やで≫


夜中に電話がかかってきたもんだから出てみたらこれだ。時計を見たら零時を少し過ぎている。言われて気付いた訳だけど…だから何?わざわざ電話をかけてくる程の事だろうか。とりあえず、そうだね。としか言いようがない。


≪何や冷たいなー。七夕やで?≫

「それさっきも聞いた。何?願い事でも聞かせろって事?」

≪ちゃうねん!七夕って織姫はんと彦星はんが会う事の許されとる年に一度の特別な日やんか≫

「うん」

≪今頃一年ぶりの再会をしとる訳やん。ロマンチックやと思わん?≫

「あー、はいはい」


なる程。ここでやっと侑士が電話をかけてきた意味が分かった。ラブロマ好きの侑士の事だ、誰かとロマンチック談義をしたかったんだろう。多分、私の他にも何人かに電話をかけたんじゃないだろうか。そして他の人にあしらわれた結果、最終的に私にかけてきた、って感じだと思う。だけど残念な事に私は侑士の望みを叶えられそうにない。侑士がロマンチック談義をしたいだなんて私の勝手な解釈ではあるのだけど。


「残念だけど私はロマンチックだなんて思わない」

≪何でやねん!一年ぶりの再会やで?一年に一回の再会やで?≫

「お互い体面を保つ為の行事的なものになってると思うな。会えない一年の間で絶対お互い近場の人と上手くやってるって」

≪…そんな夢のない事言いなや≫


確かに夢のない事を言ってると自分でも思う。だけど、一年でしょ。たかが一年。されど一年。過ぎてみれば短く感じるかもしれない。でも愛し合ってる者同士にしてみれば一年は相当長いはずだ。しかも、一年に一度しか会えないだなんて耐えられないと思うんだ。本当に相手を愛しているなら。少なくとも私は耐えられないよ。きっと寂しさを埋めようとしてしまう。
だからきっと二人は一年に一度しか会えないんじゃなくて会わないんじゃないかと思うんだ。


「本当に相手を愛してるならさ、何が何でも会いたいって思うはずだよ」

≪せやけど≫

「私だったら会いに行くよ。無理って言われても、駄目って言われてもどうにかして。好きな人とは出来るだけ一緒に居たいでしょ」

≪…なんや、自分結構ロマンチストやな≫


バーカ、と言ってやると電話の向こうから笑い声が聞こえた。別にロマンチストなんかじゃない。当然の事を言ったまでだ。だけど、侑士が何だか満足そうに笑うからそういう事にしておいても良いような気がした。
とりあえず、これからも侑士と一緒に居られますように、と願っておこうかな。



アンチロマンチスト

大分過ぎたけど七夕記念(?)
20090709

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