練習中だろうと試合中だろうとところ構わず寝ている彼が、今日は何故だか起きている。そして爛爛と目を輝かせ私を見つめている。そりゃぁもう期待に胸を膨らませているような眼差しで。


「何ですかジロー先輩」

「あのさー!」


声をかければ、待ってましたと言わんばかりにニッコリと笑ってジロー先輩は私の側へと駆けてきた。言わずもがな今は部活中であり、ジロー先輩以外の部員達はコートの中に入っている。駆けていくべきは私の側ではなくコートの中ですよ、と言ってやりたい。


「今日って何の日か知ってる?」

「今日、ですか?」

「そう!今日!」


ニコニコと問うジロー先輩に少し悩んだフリをして「そういえば今日は子供の日でしたね」と答える。鯉のぼりがたくさん泳いでました、と付け加えれば「俺の家にもあるC−!ちっちゃい奴だけど」と相変わらずな調子で返事をされた。何を言いたいんだジロー先輩は。今は雑談してる場合じゃない。部活中なのだ。


「子供の日は分かりましたからコートに行って下さい!跡部部長が睨んでますよ」

「えー!違うC−!そうじゃなくて」


チラチラと跡部部長を気にしながら話を続けようとするジロー先輩にさっきまでの笑顔はない。眉を八の字にして困っているというか、期待を裏切られたようなそんな表情。「ほら、早く行って下さい。練習練習!」と背中を押せば、違うのにだとかそうじゃなくてだとかブツブツ言いながらコートへと向かっていく。その後ろ姿は明らかにしょんぼりとしている。
まったく。ちゃんと知ってますから。子供の日より何よりも今日が特別な日だって事くらい。


「ジロー先輩」


なーにー、と振り返ったジロー先輩からはやる気など更更感じられない。困ったもんだ。分かり易いと言ったら分かり易いんだけど。


「お誕生日、おめでとうございます」

「…!」

「プレゼントは練習が終わるまでお預けです」


だから練習頑張って下さい、と言えば、みるみるとその表情は笑顔に変わっていく。満面の笑みだ。本当に分かり易いったらない。


「う、嬉C−!よっしゃー!俺、頑張るC−!」


そう叫んでコートへと駆けていく背中を見て思わず笑みが零れた。
プレゼント、気にいってくれると良いな。



可愛い先輩


遅くなったけど、ジローちゃん誕生日おめでとう!
20090514

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