「亮って長太郎君の事超好きだよねー」

「ぶはっ!」


ボソッと口にしたつもりではあるのだが、隣に居た亮には普通に聞こえていたらしい。飲んでいたドリンクを勢い良く噴き出した。うわっ。汚い。そしてしばらくむせた後ごしごしと口を拭いながら「お前何言ってんだよっ」と耳まで真っ赤にして慌て出した。慌て過ぎ。笑える。


「だって本当の事じゃない」

「本当の事って」

「何かあれば長太郎長太郎ってさ。学年違うのに何故か一緒に居る率が高いし。好きだよね本当」

「それは、ほら、あれだ。あれだろ」


あれって何ですか。と言いそうになって口をつぐむ。もう少しからかってみるのも面白いが私もそこまで意地悪ではない。
彼等が、部活での良きパートナーであるという事は重々理解している。理解はしているのだが、いつでも何処でも長太郎長太郎。何かあると長太郎。さすがに妬けてくる。
だからと言って長太郎君を嫌いな訳ではない。彼はとても良い子だ。穏やかで優しくて、とても良い子。ただその優しさが仇になる事がたまにある。頼まれ事を断れないだとか。亮にとっては彼のそういった部分が見ていられない、と言うか心配なんだろう。パートナーとして。先輩として。分かっては、いるのだ。


「私も長太郎君は好きだけどさ」

「おう」

「亮が大好きな私としてはやっぱり妬いちゃうな」

「何だよっそれ」


亮はまたしても耳まで真っ赤にして慌て出した。「俺だって、俺だってなぁ!」と声をあげる。もごもごと口ごもってその先を言わない亮に今度は「俺だって何?」と少し意地悪をしてみる。すると更に顔を真っ赤にして面白いくらい目を泳がせる。
本当はね、妬く必要ない事だって分かってるんだ。その態度を見れば一目瞭然。頭で分かっていても気持ちが付いていかないとはこの事。
さて、未だ目を泳がせて真っ赤になっている彼は何と言ってくれるのだろうか。



だって一番になりたい

20090507

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