※動乱編後の話。






私は彼を敬愛していました。博識でいて、武術にも長けている。まさに完璧。先生と呼ぶに相応しい人物だと思っていました。共に過ごした時間は短いけれど、屯所の誰よりも敬愛していました。もちろん、局長や副長にも尊敬と親しみの気持をもっていますが、武闘派な彼らとはまた違う魅力に溢れている彼に、私は魅了されたのです。これからもずっと傍に居たいと心の底から思っていました。


拝啓

君がこの手紙を読んでいるという事は任務を終え屯所に戻っているという事だね。一先ず、御苦労様。
難しい任務ではなかったと思うがそそっかしい君の事だ。何かしら怪我をしているんじゃないだろうか。例え切り傷だろうがしっかり手当してもらうように。
さて、君がこれを読んでいる頃、周りの状況は大きく変化していると思うが、僕はどうなっているだろうか。君は、どう思っているだろうか。
何が起きたのか、僕が何を起こしたのか、聞いていると思う。それらは僕が常々考えていた事だ。君に何も話さなかった事、その時期に合わせ君を遠方への長期任務に向かわせた事、本当にすまないと思っている。しかし勘違いはしないで欲しい。君に話さず同行させなかった理由を。
決して君が僕の部下として力及ばないから、という訳ではないよ。君は良く働いてくれたと思っている。その働きぶりには感謝しているよ。今回の計画には危険が伴うから、君には関わって欲しくなかったんだ。だから遠方へ行かせれば君が巻き込まれる事はないし、知らなければ後々罪に問われる事はないと思ったんだ。結果がどうなっても君の立場が危ぶまれるような事にはしたくなかった。それが理由だよ。
ついでに君に対して言っておきたい事が多々ある。まず、しっかりと目覚ましで起きられるように。君を起こしに行って寝起きの悪さを見せられるのは僕で十分だし、君を起こすのは中々骨が折れるからね。それと少しは恥じらいを覚える事。男所帯の中で過ごしているからそれに染まってしまったのかもしれないが、君は女なんだ。少しは女らしくしたまえ。あと、もう子供じゃないんだから好き嫌いは無くすように。栄養が偏るぞ。それから、上司であろうと言いたい事はしっかり言うようにしたまえ。言わないと理解してくれない連中ばかりだろう。
まぁ、まだまだ言いたい事は山程あるが、一番言いたい事は僕は君にとても感謝しているという事だ。ここに来たばかりで勝手が何も分からない僕に色々と教えてくれたのは君だったね。その時は一隊士だと、そういう気持ちしか抱いていなかった。だから親切な君に対する僕の態度は非礼なものだったかもしれない。だけどそんな僕を敬遠する事無く、君は親切だったね。それが強く心に残っている。
それからしばらくして君は僕の下に配属された訳だが、君が来てからというもの、心の休まる日はなかったような気がするよ。相変わらず親切ではあったが、印象は大分変った。すぐドジを踏むし、目を離すとフラフラと何処かへ行くし、本当、心の休まる日はなかったな。だけど、毎日がとても楽しかったような気がする。大袈裟かもしれないが人生で一番楽しい時間を過ごせたと思う。困らせられる事も多かったが、君は誰よりも一生懸命で、誰よりも僕を慕ってくれた。優秀な部下を持てて僕は嬉しかったよ。
これからも、君には変わらずに君でいて欲しいと思う。体に気を付けて毎日笑って過ごして欲しい。
僕を恨もうが呪おうが構わないが最後に言わせ

それでは。

敬具



「せ、せんせっ」


私は先生を敬愛しています。博識でいて、武術にも長けている。まさに完璧。先生と呼ぶに相応しい人物だと思っています。共に過ごした時間は短いけれど、屯所の誰よりも敬愛しているのです。もちろん、局長や副長にも尊敬と親しみの気持をもっていますが、武闘派な彼らとはまた違う魅力に溢れている先生に、私は魅了されたのです。これからもずっと傍に居たいと心の底から思っています。事実を知ってもその気持ちは揺るぐ事などありません。何故なら先生はとてもお優しいからです。恨むにしても呪うにしても私にはその理由が見つからないからです。お優しい先生しか私には見つけられないのです。



死んでなお優しい君へ

お題:maria
20091112

戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -