どのくらい時間が経っただろう。多分3時間は優に越えている。そんな正確には分からない長い時間、私は副長の部屋で副長と向き合って過ごしている。何してるかって?説教垂れられてるんですよ。説教。
もうホント勘弁してくれ。いい加減にしないと職業マヨラー、趣味説教、友達募集中って書いた顔写真入りのビラ江戸中に貼ってやるぞコラ。こちとらずっと正座なんですよ。足はとっくに限界を越えて感覚がマヒしている。絶対足の色紫になってんぞ。どうしてくれんだ土方。偉そうに胡座なんてかきやがって。いや、実際偉いんだけど。今からでも良い。正座しろ。そして少しでも私の気持ちを味わって長い時間説教垂れた事を反省しろ。と、心の中で毒づいてみる。
そもそもこうなったのは沖田隊長のせいだ。今日の市中見回りで私は隊長とペアになった。屯所を出てしばらくは2人で歩いていたのだけど気付けば隊長は居なくなっていて私1人。どうせどっかに昼寝でもしに行ったんだろう、サボりなんていつもの事だ、と気にも留めず見回りをしたのだけど。見回りを終え屯所に帰れば既に帰っていた隊長に、悪ィ、サボり見つかっちゃいやした、土方さんが呼んでやす頑張れ、と悪いと思ってる素振りを微塵も感じさせない笑顔で肩を叩かれて、訳が分からないまま副長を訪ねてこの状況。おかしいよね?おかしいでしょ。何で、何故総悟から目を離した、何故総悟をちゃんと見ていなかった、と私が説教垂れられなきゃいけないんですか。知ってましたか副長。市中見回りは市中を見回る事が仕事であって隊長を見張るのが仕事じゃないんですよ。私はちゃんと仕事したんですよ。悪いのは隊長じゃないですか。なのにどうして私が単品で長々説教を垂れられなきゃならないんですか。何が頑張れ、だ。覚えてろよ隊長。


「以後気を付けろ。分かったな」

「了解しました」


長ったらしい説教はやっと終わったらしい。すみません、毒づくのに一生懸命でほとんど聞いてませんでした。なんて言ったらまた説教されるのが目に見えてるから分かったフリをして返事をした。長ったらしい説教聞いてやったんだ。感謝しろよ土方コノヤロー。


「…説教され足りねーのか」


立ち上がる素振りを見せない私に副長は怪訝な表情を向ける。物好きだなお前、ってんな訳あるか。足感覚ねーんだよ死ね土方。何時間正座してたと思ってんだ。あーそうか。胡座かいてたんだから今の私の状況を理解出来る訳ないですよねー。ですよねー。死ね土方。


「足の感覚がなくて立てません」

「…なら足を伸ばせ」

「ではお言葉に甘えて」


言い終えるなりドサッと前の方に倒れてやった。そして大の字。ちょ、それおかしくねぇ?と聞こえてきたが無視だ、無視。感覚ないって言っただろーが。動かす事すら出来ないんだよ。動くのは上体のみなんだよ。ちゃんと人の話聞けよ土方。私の状態を見て事の重大さを思い知れ。そして足に謝れ。いや、私に謝れ。
と、思っていたら、すまなかったな、なんて奇妙な言葉が聞こえてきた。え、私口に出してましたか。いやいや、口に出していたら私は既にこの世には居ないだろう。
何なんですか副長。らしくない。気持ち悪いです。


「お前と話すのは久しぶりだったからな。つい…」


つい、何ですか。長くなっちゃったってか。話すって副長が一方的に話してただけじゃないですか。
顔を上げれば目の前に座りっぱなしの副長は体はそのままで顔だけを背けていた。気持ち顔が赤い気がする。うわっ、ふ、副長。そんなに私と話したかったんですか。気持ち悪い。が、ときめいちゃったじゃないか。


「次は是非楽しい話をして過ごしたいです」

「そりゃお前次第だ」


顔は背けたまま視線だけを向けてきた副長に、やっぱり死ね、と呟いてやった。
素直になれよ土方。とりあえず明日から副長の元に足繁く通いますからね。



口実

20081209

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