学校に来る前、家に居る時点で、むしろ起きた瞬間から頭が痛かったのだ。
それを、私は皆勤賞を取る!なんて気合いと頭痛薬で何とかして私は学校に来たのだ。風邪だったら周りに移してしまうかもしれないのにそんな迷惑も考えずに。
そしてそんな自分の行動を後悔したのは昼が近くなった頃。頭痛薬の効果が切れたせいかズキズキと頭が痛み出したからだ。痛みは最初に感じたものの比ではない。一生懸命先生が話しているというのにそんなものは右から左だ。皆勤賞がなんだ。そんなものどうだって良いじゃないか。私のバカ。バカバカバカ。いくら自分を罵って後悔しても時既に遅し、というものだけど。
その後何とか授業を乗り切った私は昼休みに入るや否や友達に保健室に行くと告げて保健室に向かった。保健の先生に事情を話すと何も食べていなかったから頭痛薬は貰えなかったものの、ベッドで寝る事を許可してくれた。自分のと比べると貧相なはずなのに何故か寝心地の良いベッド。横になるなり私は夢の世界へと落ちていった。
そう。だから私は今、保健室のベッドの上に居るはずなのだ。うん。その、はず。己の身一つで布団に包まったはずなのに、それなのに、何故、目を覚ました私の視界は銀色のフサフサを捉えているのだろうか。


「何、してるの…雅治」

「あ、いっ、何って、添い寝」


目の前の銀色をグイグイを引っ張りながら問いかければ答えが返ってきた。感触もあるし、どうやら幻覚ではないらしい。それはそうだ。頭の痛みはないし意識が朦朧としている訳でもない。強いて言うなら少し暑い…ってそれは隣にコイツが居るせいか。
大丈夫かー、とニコニコ笑ってるコイツは今のこの状況を何とも思っていないらしい。いつの間に潜り込んできたんだろう。何で私はその時起きなかったんだろう。いや、今はそんな事どうでも良い。


「添い寝はもう良いからさ、退いてよ」

「嫌じゃ」

「バレたらマズイでしょ」

「大丈夫。先生居らんけ」

「…良いから退いてよ」

「嫌」

「退け」

「いーやー」


いやいやいや。嫌、じゃないんだよ。先生居ないから良いって事じゃないでしょうが。可愛く言ってもダメだから。って言うか若干気持ち悪い。
動く気配を見せない雅治に溜め息を一つ。雅治が退かないなら私が、と言いたいところだけどダルさが残っているからもう少し寝ていたい。もちろん1人で。
どうすれば雅治が退いてくれるのかあれやこれやと私が頭を悩ませている一方、雅治は相変わらずニコニコと笑っている。何ですか。いつもならポッと頬を赤らめてしまうところかもしれないけど今は非常に腹が立つ。素直に退いてくれませんか。そして安心して私を寝かせて欲しいんですけど。


「教室行ったら居らんけぇ、友達に聞いたら保健室言うとったからこれでも心配して来とるんよ?」

「…そりゃどーも。でも添い寝なんていらない」

「俺に何も言わんなんて寂しい事した罰。なんて、本当は寝顔が可愛くて抱き締めたくなっただけなんじゃけど」


そう言って少しひんやりとした手を私の額に乗せる雅治に私は体が硬直した。何恥ずかしい事言ってくれちゃってんの。不意を突かれたと言うか何と言うか、どうかこの心臓のドキドキが雅治に聞こえませんように。


「風邪だったら移っちゃうよ。だからもう、退いてよ」

「ええよ。だったら移して早く良くなりんしゃい」


皆勤賞が取りたかったとかそんなんじゃなくて、私はただ雅治に会いたかったのかもしれない。やんわりと微笑む雅治を見て、ほんの少しそう思ったのでした。







後日、見事に風邪が移った雅治が真田君に説教をされる事になったのは言うまでもない。

20090208

戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -