夕飯の買い物に出てきたのだけど突然の大雨に降られた。出てきた時は晴れていたのでもちろん傘なんて物は持っていない訳で、今現在お店の軒先をお借りして雨宿りをしている。最悪だ。最悪だよこれ。可笑しいな。朝観た結野アナの占いでは一位だったのに。「今日は最高の一日になりまーす」って結野アナは笑顔で言ってたのに。もう夕方だけど今に至るまで最高な事は何もなかった。それにこの状況。どこが最高?


「はぁーあ」


溜め息を吐いてみても状況はさっぱり変わらなかった。そりゃそうだ。溜め息一つで雨が止むなんて魔法使いか私は。どんよりと厚い雲に覆われた空を見上げてもう一度溜め息を落とした。さっきまでは晴れてたのになぁ。ちくしょう!そこら辺の店で傘買えば良いじゃないか、と思うかもしれないけれども、残念な事に私は財布を忘れてきてしまったようで無一文だった。って事に雨が降ってから気付いた。そうだ、傘を買おう!と思ってから気付いた。夕飯の買い物する前に気付けて良かったなー、とちょっとポジティブに考えてみたけど、財布持たないで買い物って馬鹿じゃないの私!一番大事な物じゃないですか。と一瞬でヘコんだ。自分の残念さ加減に。走って帰るにも若干距離があるから、びしょ濡れになる事は必須。着物を着替えてまた出直すのは手間だし、それよりなら雨が止むまで待とうかなー、と待っているんだけど雨は一向に止む気配を見せない。弱まる気配すら見せない。何だか寒くなってきたし…最悪だ。はぁ、ともう一度溜め息を吐いて思わず俯いた。あ、内股になってる。


「入りますか、お嬢さん」

「…銀ちゃん」


フッと影が差して、視界に入った見慣れたブーツと聞き慣れた声。顔を上げれば目の前には傘を差した銀ちゃんが立っていた。何してんの?と聞けば「お前こそ何してんの」と返ってきた。雨宿り、と答えれば「見れば分かる」だってさ!もう!何なのよ!地団太を踏む私をよそに銀ちゃんはごそごそと懐を漁り出した。そして「ほれ」と手を出す。その手にあったのは私の財布。


「サザエさんですかお前は」

「あはは、ごめん」

「銀さんジャンプ読みかけなんですけど」

「ごめんってば」


だったら別にわざわざ来てくれなくても良かったのに、とは言わないでおこうと思う。何だかんだ言っても銀ちゃんってば優しいんだから!素直になれよコノヤロー!「ほら早く入れよ」と招かれた傘の下はちょっと狭かった。だけど、銀ちゃんとぴったりくっ付けたお陰で温かい。


「ねぇねぇ銀ちゃん」

「何だよ」

「狭いねー」

「文句言うな」

「ねぇねぇ銀ちゃん」

「何だっつーの」

「相合傘だねー」

「…うるせーな」


どうやら照れたようで、耳が赤くなった銀ちゃんに口元が緩んだ。笑ってんじゃねーよ、と言われたけれどニヤニヤが止まらない。だって嬉しいし、幸せだし、温かいし、銀ちゃん可愛いし!


「ねぇ銀ちゃん!」

「今度は何だよ!」

「占い当たった!」

「…何の話?」

「うふふ、こっちの話!」



最高の一日になります



銀ちゃんの要望で今日はハンバーグを作る事になりました。二人で材料を選んでる時、物凄く楽しかったです。たくさん買い物をしたんだけど、銀ちゃんは荷物を全部持ってくれました。おまけに傘も持てくれて、私は手ぶらです。もちろん相合傘で帰ってます。優しい銀ちゃんのお陰で私はとっても幸せです!まるっ!


20091130

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