何が年末商戦だ。何が歳末大売り出しだ。お陰で人、人、人!朝から晩まで人!人!人!もう、マジでふざけてるんですけど。あり得ないんですけど。何で朝から晩までなんて分かるかって?そりゃ今の時期大体そうでしょ。どこ行っても混んでますよ。まぁそれもあるんですけども、一番はこそに私が居るって事ですよね。ええ、朝から晩まで。もちろん仕事ですとも。いらっしゃいませー。ありがとうございまーす。笑顔を張り付けてその繰り返しですよ。これってあれじゃね?労働基準なんちゃらの違反なんじゃないの?不景気だか何だか知らないけどもっとこうさぁ!短期のバイト雇うとかさ、ありますよね。店員増やしてくれても良いんじゃないの!?どんだけ仕事出来て有能でも仕事量多過ぎて捌ききれませんよ!まぁ私はそこまで仕事出来るとかそういうのじゃないですけどね!


「すいまっせーん!店員さーん!」

「…イラッシャイマセー」

「あれ?何この店員。えらいやる気ないよ?」

「あ、出口でございますか?出口はあちらです。止まらずにお進み下さい」

「え、ちょ!銀さん今来たばっかなんですけど!」


冷たいんじゃないの?ねぇ!と喚いている迷惑な客一名。まぁ見知った方なんですけど。何しに来たのこの人。このクソ忙しい時に。構ってる余裕とかないんですけど。どうしよう。スルーしようか。そんな考えを巡らせている間も奴は私の目の前で喚いている。仕舞には私の名前を呼び始めた。しかもネームに書いてある苗字で。ちょ、マジ止めてくんない?チラチラ見られてんじゃん。そこのお母さん。見ちゃいけません、とか子供さんに言うの止めてもらっていいですか?


「オマエ、ナニシニキタ」

「何で片言?銀さんさぁ、いちご牛乳買いに来たんだけど、どこ?」

「そんなんコンビニで買えやァァァァァァア!!」


やっぱスルーすれば良かったァァァァァァア!何だろうこの気持ち。これが殺意ってもんなの?ここはね、ここはね、一応大型の百貨店でね、まぁ食品売り場もあるんだけどもね、大抵の人はお節の買いものとかお餅とかね、時期的にね、だから混んでて忙しいって言ってんだろうがァァァァァァァア!いや、この人には言ってないけれども見れば分かんだろうがァァァァァァア!ちなみに言うけど私食品売り場担当じゃないし!全然違うし!フロアも違うし!食品売り場一階だし!ここ三階だし!おーい、もしもーし!ってうるさいよ!黙れよ天パ!何でわざわざ三階まで来ちゃったの?確かに私は知り合いで分からない事聞きやすいかもしれないけれども、分からないって入口入って目の前だったでしょうよ食品売り場。お前はどこを見て歩いて来たんだよ。つーか、いちご牛乳がどこにあるかなんて知らない。


「一階が食品売り場なんで、そこで聞いて下さい」

「あ、そーなの?サンキュー」


ひらひら手を振って天パは踵を返した。呆気なく。全く何だったんだ。はぁ。一気に脱力した。終わりまでまだまだ長いっていうのにこの疲労感。もう、何でこんなに頑張ってるんだろう。何の為に頑張ってるんだろう。分からなくなってきた。あ、いらっしゃいませー。今、ちゃんと笑えてたかな。


「おい」

「いらっしゃ、えっ、お、何っ」

「やるよ、ほれ」

「あり、がと」


呼ばれて顔を上げれば、目の前にさっき一階に行ったであろう天パが居た。やるよ、と渡されたのは飲料缶。あ、あったかい。って、お汁粉かよ!どんだけ甘党だよ!彼曰く差し入れだそうだ。ありがたいけど、これ逆に喉乾いちゃうじゃないか。まぁ、良いんだけど。天パさんはまだ佇んでいる。目が合った。


「まぁ、あと少しだし、頑張れや」

「あ、はい」

「終わったらパーっと飲もうぜ。どうせ寂しく年越しだろ」

「あ、はい。ってうるせぇな!」

「鍋でも準備して銀さん待ってっからよ」

「鍋…肉食べたい。いっぱい」

「あー!はいはい!入れてやるよ!いっぱい入れてやるよ!ただし豚肉な」

「やった!」

「そうそう。お前はそうやって無邪気に笑ってりゃ良いんだよ」


じゃ、帰るわ、と彼は帰って行きました。何だそれ。意味が分かりません。でも、鍋かぁ。肉買って行こう。絶対ケチってる気がするし。あと酒も買ってってやるか。仕事終わりに楽しみがあるとやる気が違いますね!楽しみ!あくまでも鍋が楽しみなだけであって、待ってるって言われたのが嬉しいとかそんなんじゃないから!全然違うから!とりあえず、最後まで頑張りますか!いらっしゃいませ!お客様!



早く来い恋

今年一年お疲れ様です。って気持ちで書いてたんですが年が明けてしまいました。山なし落ちなしですみません。明けましておめでとうございます。
20120103

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