頭が痛い。覚醒して一番に浮かんだのがそれだった。起き上がると更に痛いように感じた。もー、最悪。ただこれは風邪をひいたとかじゃなくて、昨日の合コンで飲み過ぎてしまったっていうね。そうです。二日酔いです。自業自得です。はい。私は数合わせで参加したから、猫を被る友人達を尻目にガンガン飲んじゃった訳ですよ。んで、見事に酔っぱらって、酔っぱらって…?


「ひぃっ!!!」


よくよくと見ると私は裸だった。そして隣には寝ている。同じく裸の人間が。少なくても上半身は裸である。綺麗な背中がこっちを向いています。下は履いてるかもしれないけども、布団掛ってて分かんないし。うわー。うわー。これもしかしたらもしかしちゃった系ですかうわー。ここは間違いなく私の部屋ですし、私がお持ち帰りしちゃった感じですかうわー。どんだけ肉食女子なんですか私はー。よし。とりあえず記憶の欠片を探しに行こうそうしよう。


「おはようさん。どこ行くん?」

「ひっ!あ、う」

「そないビビらんでもええやん」

「あは。お、おはよう。蔵ノ介君」


こっそり布団を抜け出すつもりがバレたー!起きてたのか起こしたのか知らないけども気付かれたー!気まずい!…んだけども、どうやら気まずいのは私だけのようだ。蔵ノ介君めっちゃ爽やかー。超笑顔なんですけど。


「もうちょいゆっくりしたらええんちゃう?」

「あ、はい」


超笑顔を前に私は拒否する事が出来ず布団から出した足を戻すのでした。服ぐらい着たいんですけど。恥ずかしいんですけど。何この状況。とりあえずうつ伏せに体勢を変える。ちらりと窺えば蔵ノ介君は相変わらず笑顔で私の方を向いている。ぎゃー!ホント恥ずかしいんですけど!


「何やよそよそしいなぁ。昨日は可愛い姿見せてくれはったのに」

「かわっ」

「覚えてへんの?可愛かったで?蔵ノ介君もっとぉとか言っ」
「ちょちょちょ!それ以上は勘弁して下さい!」


一気に顔が熱くなった。うわー!もしかしちゃってたー!私が慌てる一方蔵ノ介君は笑顔で…。この人確信犯なんじゃね?わざとじゃね?そんな考えが浮かんだがまずは記憶を掘り起こそうと思う。何でこうなったのか。うん。えーと、えーと、合コン行ったら蔵ノ介君が居てですね、中学のテニスの大会で顔見知り程度だったんですけど、覚えててくれてて、久しぶりーとかなって話してたら蔵ノ介君も数合わせで、こういうの苦手とか言ってって、でも女子は蔵ノ介君ロックオンしててそれで、私はとりあえず飲みまくってて、えーと…。うん。無理。


「すみませんが、、私達どうしてこうなったんでしょうか」

「…まぁ、あんだけ飲んどったらしゃーないよなぁ」


あ、具合悪ない?とか優しいんですけど。何なのこの王子。こんなの絶対昨日居た友人達には言えない。言ったらどうなる事か…ひぃっ!と、まずこれは置いといて、気付けば頭痛は少し和らいだような気がして、大丈夫と頷いた。なら良かった、と話を続けた蔵ノ介君によるとこうだ。
店を出る頃になると私は完全に酔っぱらっていたそうだ。はい覚えてません。二次会があったそうだが、私の状態を見た蔵ノ介君は、私を送ってそのまま帰ると言って抜けた。千鳥足の私に肩を貸し、呂律が回らない道案内に従って家に着いたらしい。玄関先でもう歩けないと駄々をこねた私を担いでベッドへ。で、そのまま…ってわー!わー!


「…すみませんでした。割とマジで」

「いや、お陰で抜けられたし助かったわぁ。俺ほんま苦手やねん。ああいうの。それに可愛い姿も見られたしな」

「ちょっ…!」

「それと、実は謝るのは俺の方やねん。ベッドに運んだ後帰ろ思ったんやけど、あんまりにも可愛過ぎてなぁ…襲ってしまいましたすんません」


歯止めきかんかった、って何を言ってるんだこの男は!もう体中が熱い。勘弁して下さい。恥ずかしげもなくそんな事言えるなんて。


「で、提案なんやけど」

「え、はい」

「付き合わへん?俺ら。むしろ付き合って下さい」

「はっ御冗談を」

「嘘やない。昨日再会出来てめっちゃ嬉しかったんやで。ええ子やなぁ思っとたし。それに、誰とでもこんな事する訳やないで」


ずっと笑顔だった表情はいつの間にか真剣で、でも相変わらず私を向いていて。きゅん、とどこかが音をたてた。って、こんなイケメンが私を…?ありえない!


「これは夢だ!」

「夢やない」

「まだ酔っぱらってるんでしょ」

「酔ってへん」

「じゃぁっ」

「現実やゆー事分からせたろか」


そう言うと蔵ノ介君は覆い被さってきた。うわっ!きれーだなー…って違う!ちょっと待って!ジタバタともがいてみても力で叶うはずもなかった。両手首はしっかりと拘束されている。そして首筋に生温かい感触。ひぎゃっ!なんて変な声を出した私は色気もへったくれもない。蔵ノ介君は本当にこんな女でいいのだろうか。もっと良い人がいっぱい居るはずだ。彼ならば。


「フッ、ほんまかわええなぁ。好きやで」


熱っぽいその声に、またきゅんっと音が聞こえた。目の前の笑顔が私には眩し過ぎるけど、とりあえず、いつの間にか離れた手が優しく頭を撫でるから身を任せる事にする。





20120526

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