「あ、ジャッカル」

「よう」

「今年も頑張って下さい」

「いやいや。そこは普通明けましておめでとう、だろ」


ペコリと下げた頭を上げるとジャッカルは呆れたように笑っていた。「まぁ、ありがとよ」と言ったジャッカルは何に対してその言葉を言われているのか多分分かっているのだろう。


「おめでとうはメールで言ったから良いかなーと思って」

「そうかよ」

「でも明けましておめでとう」

「明けましておめでとう」

「今年も頑張ってね」

「さっきも聞いたっつーの」


そんな会話を交わしながら二人が向かう先は神社。言わずもがな目的は初詣である。きっと目的を同じくする人々で神社はごった返しているに違いない。その人混みに自ら飛び込むなんて見事なチャレンジ精神だと思う。だけど、年越しは部活の仲間と過ごすけど、元旦の初詣は絶対一緒に行こうとジャッカルが言ってくれたから行かない訳にはいかない。というか絶対行きたい。人混みなんて関係ない。とは思っていたものの、神社は予想以上に物凄い人だった。人、人、人。人で溢れている。


「うわぁ…」

「すげぇ人だな。はぐれるなよ」

「大丈夫!はぐれてもジャッカルは見付け易いから」

「どういう意味だよ。そうは言ってもこんな人混みじゃお前埋まっちまうだろ」


ほら、と差し出された手を握って、人混みを進む。人にぶつかってごめんなさいと言う度、ジャッカルはグッと手を握ってくれた。離れないようにしっかりと。そして、大丈夫か?とか疲れてないか?とか小まめに声を掛けてくれる。自分だって同じ状況のはずなのに私にばかり気を遣ってくれる。困ってしまう程、ジャッカルは優しい。
しばらくして、やっと賽銭箱の前まで辿り着いた私達は賽銭を投げて祈った。その時間はここに辿り着くまでに比べたらほんの一瞬。呆気ない程短かった。


「真剣だったな。何願ったんだ?」


祈願を終え、来た時と同じように人混みを進みながら聞くジャッカルに私は嬉々として答える。


「んとね、テストで一〇〇点取れますように、健康で過ごせますように、無事卒業出来ますように、それとね」

「まだあんのかよ!欲張りだな。そんなに叶えてもらえねぇぞ」

「大丈夫!五〇〇円投げたもん」

「随分奮発したな」

「だって絶対叶えてもらわなくっちゃ」


そーかよ、と本日二回目の呆れたように笑ったジャッカルを見ながら心の奥で思う。知ってますかジャッカル君。願い事っていうのは言ったら叶わないんだよ。他の人に教えたらいけないんだよ。だから、本当のたった一つの願い事は絶対教えなんだからね。



ずっと一緒に居れますように



「ジャッカルは何お願いしたの?」

「…教えねぇ」

「えー!何それー!ん?おっ」


ようやく出口に辿り着いた頃、ジャッカルを除くテニス部ご一行と遭遇した。寂しい奴らめ。ひっそりとほくそ笑んでいたら、丸井と切原君に冷やかされた。負け惜しみかコノヤロー!ととりあえず二人には飛び蹴りを食らわしてやった。ジャッカルをあんまり苛めるな、の意も込めて。


「ずっと一緒に居たい、って願ったなんて恥ずかしくて言えねぇよな」


お陰様でジャッカルの呟きは聞こえなかった。願い事、絶対叶うよね!

20100206

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