彼が良く寝るというのは周知の事実である。だから部活中に姿が見えないとなれば何処かで寝ているのだろうと簡単に結論が出る。聞けば授業中でも構わず寝ているらしい。その為テストはいつも赤点ギリギリだという。跡部部長によるテスト前の勉強会のお陰で赤点は免れているようだけど。


「ジローせんぱーい」


そして今日も例の如くジロー先輩の姿が見えない。部長命令で彼を探しているのだが、まぁ、難しい事じゃない。ジロー先輩の寝る場所は限られている。彼曰く、寝心地の良い場所。何箇所かあるその場所を探せば良いんだから。


「あ、居た。ジロー先輩」


今日は勘が冴えていたようで一箇所目で見つける事が出来た。寝ている先輩の隣に屈んで声をかけながら体を揺すると「うーん」と唸り声が聞こえた。


「ジロー先輩!起きて下さい!部活です」

「…んー?あー、名前ちゃんだぁ」


薄らと目を開けた先輩は私に気が付くとにっこりと笑ってみせた。笑ってる場合じゃないんですけど。そしてその後「おはよー」と間延びした挨拶をくれた。おはようございます。部活ですよ。と言えば「えへへ」とまた笑顔。だから笑ってる場合じゃないんですってば。


「早く行きましょう。とっくに部活始まってますから」

「えー!もうちょっとぉ」

「駄目です。部長に怒られちゃいます」

「名前ちゃんも一緒に昼寝しようよー。ここ気持ちEよー」

「昼はもう過ぎました。今は放課後です」


呆れてみてもジロー先輩には効果がないようで、彼はゴロン、とうつ伏せに体制を変えた。まさかそのまままた寝るつもりじゃないでしょうね。


「私は樺地君みたいに寝てる先輩を担いでいく事なんて出来ないんですから…起きて下さいよ」

「んー…分か、ってるCぃ」

「…先輩?」


耳を澄ませばスースーと寝息が聞こえてきた。やっぱり寝てしまった。やられた。先輩はいつもこうだ。一回起こしてもまた寝てしまう。それかしばらく駄々をこねる。すんなりいった試しがない。樺地君なら先輩が寝ていても担いで連れていく事が出来るのに、跡部部長的には私の方が適任だそうだ。連れてくるまで時間がかかるけど、やる気が違うとの事。意味が分からない。でもまぁ、ジロー先輩の可愛い寝顔が拝めるんだから役得って事で。



二人で居たいんです

20091125

戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -