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「モカちゃんおいで〜」
手を伸ばされたから飛び乗る。
温かいミネちゃんの腕の中に収まってホッと一息。
やっぱり温かいところがいいよう。
二人も仲直りしたかな。
カタセくんとミネちゃんと、腕の中のあたし。
一緒に歩く帰り道、吐く息は白く消えていくおもちゃみたい。
「……片瀬くんが来てくれて安心した。モカちゃんも見つかってよかった。モカちゃんがいなくなったら生きていけないもん」
「そんなにモカが大事?」
「うん。だって、子供みたいなもんだよ。家族だもん」
「でもモカは先に死ぬだろ。そんなに依存してちゃ心配だよ」
そうね。あたしはネコだもの。
カタセくんやミネちゃんほど長生きはしないなぁ。
でもまだまだ元気よ。勝手に殺さないでちょうだい。
「嫌な事言わないで」
「ごめん。でもさ」
カタセくんが立ち止まる。ミネちゃんが、不思議そうに後ろを振り向いた。
暗闇の中、カタセくんの顔は真剣そのもの。
「その時美音が壊れないように、すぐ傍に居たいよ、俺」
「片瀬くん?」
「美音と、俺と、モカで、家族にならない?」
そこで、あたしは気がついた。
昨日の電話の“けっこ”って、もしかして“結婚”のことかぁ!
「みゃーおん、みゃーおん」
ようやく分かってスッキリして、嬉しくって鳴いたら、頭の上に落ちてくる雫。
ありゃ。ミネちゃん泣いちゃってる。
「……モカの方が先に返事してくれたけど?」
くすりと笑って覗き込むカタセくん。
返事なんてしてないよ?
あたし、カタセくんなんて大嫌いだからね?