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『違うんだ。……その、』

「みゃーおん」
顔見てお話しなよ。
ああもう、面倒くさいなぁ。

「あ、モカちゃん」

するりとミネちゃんの腕を抜けだして、頭で窓を押し開ける。
鍵しまってなくてよかったぁ。

外からはすっごい冷たい風。うわあ嫌だぁ。

「こら、入っておいで」

「みゃー」
でも、こうでもしないと動かないじゃん。ミネちゃんたち。

『美音? どうした?』

「モカちゃんが。ダメだよ、外は」

あたしがベランダからぴょーんと飛び出すと、ミネちゃんが悲鳴みたいな声を出す。

「ダメだってば。モカちゃん!」

そこから先の会話はあたしにはもう聞こえなかったけど想像はできる。

ミネちゃんはあたしを心配して半泣きになって、カタセくんはそんなミネちゃんを放って置けるはずがないから助けにくるはず。

だって、ミネちゃんが大好きなんだもん。
そうでしょ?



それからどれくらい経ったかしら。
あたしはガチガチ体を震わせながら、いつもの公園の近くの家に止まっていた車の下にいた。

「おーい、モカ」

「モカちゃーん」

あたしを探す声がして、ああ良かったぁとホッとする。
絶対来るはずって思っていたけど、このままじゃ凍え死ぬところだったよう。

「みゃーおん」
ここだよー。

お返事すると、ミネちゃんの声が近づいてきた。

「あっ、モカちゃんの声だ。良かった。いたよ、片瀬くん」

「全く世話かけさせるなよ、モカ」

並んでやってきた二人の前に姿を見せたら、呆れたように言われた。

いやいや、それってあたしのセリフだからね。




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