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「もしもし?」
ミネちゃんは何度もためらった後、スマホを操作した。
ううん、アッサリ動かすなぁ。
あたしがやった時と何が違うんだろう。
「片瀬くん?」
『み、美音? あ、あ、あのさ』
「ねぇ、なんで避けるの?」
『だって昨日思わずあんな事言っちゃって。……重いよな、美音はまだそんな気なさそうなのに』
要するに、カタセくんは言ったもののビビっちゃったのね?
なんなの。“けっこ”ってそんなに怖いものなの。
「昨日って何?」
『え? 電話、くれたろ? その時の』
「電話なんてしてないよ?」
ミネちゃんがあたしをチラリと見る。
あれ?
もしかして、なんかヤバイ?
あたしのおヒゲが危険を察知した。
こそこそと部屋から抜けだそうとすると、ミネちゃんの腕があたしを捕まえる。
「片瀬くん、それって何時頃の話?」
『夜、22時ごろだったかな』
「私、その時間はお風呂よ。……モカちゃん?」
「みゃー!」
凄みの効いた声。
怖いよー。怒られるー。
『……じゃあ、美音は昨日の話聞いてないわけ?』
「何の話をしたの?」
『えっ。いやその。あの』
「なんかこの間から態度変だよね。……私何かした? 片瀬くんに、嫌われるようなこと」
あ、また声が潤んできた。
ミネちゃんたら情緒不安定よ。
もう、カタセくんといい、ミネちゃんといい、すぐ泣いたり笑ったりビョーキみたい。