7

あたしは、ミネちゃんの腕から飛び出すと、いつも鍵は開けっ放しになっている窓を根性で開けた。

小さな隙間から頭をねじ込ませて外にでる。

後はカンタン。
抜け出すのなんてもう慣れっこだもの。

屋根伝いに歩きながらカタセくんを探すと、案外近くで立ち止まっていた。

何度も何度もミネちゃんのアパートを振り向きながら、一歩進んで立ち止まって二歩戻って立ち止まって。

あら? 
また一歩進んじゃった。

何やってるのよ。結局最初にもどってるんじゃん。


「みゃーおん!」


あたしは、屋根から塀に、塀から地面にとぴょーんと飛び降りた。


「うわ。モカ。お前、……実はスゲー運動能力があんだな」

「きしゃー!」


威嚇するつもりで叫んで、カタセくんが怯んだところで大きな袋にアタックする。

地面に落ちたクルクルやまあるい玉の中から、咥えて走れそうな小さな玉を選んで噛み付く。


「おい、モカ」


なによ。もう喋れないわよ。
いいからついてらっしゃいよ。

一度だけ、そんな気持ちを込めてカタセくんを見つめた後は、アパートまで一気に走る。

ついてくるか来ないかは、自分で決めたらいいわ。

あたし、カタセくんは嫌いなんだから。
別に来なくっても困らないもん。


でも、カタセくんはきた。

最初の一歩はゆっくりだったけど、二歩三歩と続く内に、走る速度になって。

まあでも、あたしのほうが足は速いけどね?





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