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「みゃあ」
そろそろ帰るね、モカちゃん
「みゃーおん」
うん。あたしはもう少しいるね。
キジちゃんはおじいさんたちを心配させないように、暗くなる前に必ず帰る。
確かにそろそろ夕暮れだけど、あたしは帰ってもひとりだしなぁ。
もう少し休憩してようかなぁって丸くなったら、突然近くでビタンって音がした。
軽く地響きもしたかも。
びっくりして目があいちゃった。
見ると、先の方に転んでいる女の子がいる。
あーあ、泣いちゃうかな。
でもその子は、ガバっと起き上がると、口をギュッと閉じて起き上がった。
土で汚れちゃったお洋服を手で払っている。
可愛いスカート、汚れちゃったね。
「……とれない」
女の子はスカートの汚れが気になるみたい。
黒くなったところを何度も何度もこする。
でも全然ダメ。そこだけ黒模様になっちゃった。
「うっ」
転んでも泣かなかったのに、その子の目には涙が一杯。
「どうしよう」
足を交互にダンダンってやって、腕で口元を覆う。
悔しいのね? 悲しいのね?
分かるんだけど、あたしじゃ汚れは取れないなぁ。
「お父さんに買ってもらったスカートなのに」
ついに涙がこぼれだした。
お父さんが好きなんだね。
ああどうしよう。なんだかあたしまで悲しくなってきちゃった。