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スカイさん、デンシャ見るのはじめてなのかな。
あたしよりずっと大人に見えるのに、こんなことではしゃいでる。
あたしはデンシャなんかよりスカイさんの方が気になって、じっと見てることにした。
でも、スカイさんはずーっとじっとしてられるみたいなんだけど、あたしはなんだかイライラしちゃうよう。
ひらひらと飛んできた蝶々に飛びかかる。
えい、待てぇ。
ひらひら、ひらひら。
捕まえられないけど楽しーい。
そんな感じで夢中になっていると、今度は反対側からデンシャがきた。
そしたら、スカイさんはまたペコリ。
「にゃごにゃご」
お帰りなさいませ。
そんな風にいったから、もしかしたらスカイさんのご主人が乗ってるのかなって思った。
こんな猫さんのご主人ってどんなヒトなんだろう。やっぱりシツジみたいなヒトなのかな。
スカイさんの隣に並んで、ワクワクして待ってると、駅のからたくさんの人が出てきた。
あの人かな。それともあのおばさんかな。
スカイさん、嬉しい?
だけど隣のスカイさんはずっと変わらずニコニコしたまま。
特別嬉しいって感じじゃないみたい。
そして駅から人が誰も出てこなくなっても、スカイさんに駆け寄ってくるニンゲンはいなかった。
「みゃ?」
あれ、あれ、あれ。
スカイさんのご主人は?
「みゃごみゃご」
僕はご主人をお迎えしたわけじゃありませんよ。
ご主人はどこかへ行ってしまったので、探しにきたのです。
「にゃー?」
探しにってどこに?
「にゃご」
わかりませんけど、ここはニンゲンがたくさんいるみたいなので、ここで探してみようと思います。
「みゃーおん」
でも、お出かけしたんならきっと遅いよ。ミネちゃんだって夜まで帰ってこないもん。
お家で待ってたほうが楽しいよう。
「にゃごにゃご」
でもご主人とはずっと一緒って約束をしたので、見失ったら探さないと。
「みゃー」
ずっと一緒って行ったって、お出かけすることは今までだってあったでしょ?
「にゃごにゃご」
いいえ、ありません。
僕とご主人が離れたのは今まで一度だけ。
僕が家を抜けだした時だけです。