4
「逃げないなんて人慣れしてんだな」
おじさんはそうポツリというと、ポケットから何か取り出した。
カチャ、ポッ。
そんな音とともに、おじさんの指先から煙が出る。
なんだろうあれ。
細長い棒みたいなの持ってる。
よく道路に落ちてるやつに似てるけど、あれは煙は出ないしもっと短いから、違うものなのかなぁ。
じっと見ていると、その棒みたいなやつから出た白い煙は、どんどんお空にのぼって行った。
もしかして、あれが雲になっちゃうのかな。
そうしたら、雲がどんどん増えちゃうの?
だめだよう。
そしたら雨がやまないじゃない。
あたし、ミネちゃんが帰ってくる前に帰らなきゃいけないんだからやめてよう。
「にゃーにゃー」
ねえそれ、消して?
これ以上雲を増やしたらダメだよう。
「ん? 臭いのかな。煙草の匂いとかわかるのか? 動物だから」
おじさんは困ったようにそういうと、またポケットから何か取り出してその棒を突っ込んだ。
煙だけが名残惜しそうにシュルルと流れる。
すごーい。
消えちゃった。
このひと、お天気を操れる人なのかも知れない。