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「参ったなぁ」

雨の音に集中していたから、その声を聞いてびっくりした。

いつの間にか大きなおじさんがそこに居た。
体から滴を垂らして、ネコみたいにぶるるって頭を振ってる。


どうしよう。
ミネちゃんは好きだけど、男のニンゲンは怖いなぁ。

逃げようか。
でも、濡れるのはイヤよう。

なんて考えているうちに、その人があたしに気付いた。


「あ、先客がいたんだ」

「にゃー」


『せんきゃく』ってなあに?
あたしそんな名前じゃないのよ。モカっていうの。


「随分甘ったるい声で鳴くんだな」


そのおじさんが笑った。
笑うと優しそうな顔。

もしかしたらいい人かも知れない、なんて。
あたしは単純にもすぐそう思ってしまう。






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