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「にゃーおん」
「はは、こいつ、月に向かって鳴いてる。狼みたいだな」
「にゃっ」
カタセくんやっぱりキライ。
狼なんかと一緒にしないでよう。
あたしはママとお話してるの。
もう、ここじゃゆっくり話せないよう!
あたしは、ミネちゃんの腕をすり抜けてベランダの欄干に乗った。
「きゃ、危ないよモカちゃん」
「にゃーおん」
平気。ミネちゃん、あたしもう子供じゃないのよ?
隣の家の屋根までぴょーんと飛ぶ。うん。着地もばっちり。
「夜に遊びに行っちゃ駄目よ」
「みゃおん」
大丈夫。ちゃんと帰ってくるから。
ちょっとだけよ。
「いいじゃん、美音。モカちゃんだって少しは自由に動きたいんだよ」
勝手なこと言わないでくれる? カタセくん。
そうやってすぐあたしを追い出そうとするんだから。
でも今はいいわ。
ママとお話したい。
だって、こんなに綺麗なまんまるお月様。久しぶりだもの。
ぴょんぴょんと屋根をわたって、カタセくんから見えないところまでくる。
ようし。これでママとゆっくりお話ができるぞう。
「みゃーおん」
空に浮かぶ、まんまるのお月様。
ねぇ、ママ。あたしは元気だよ。毎日楽しい。
たまにカタセくんにむかつくけど。ちゃんと仕返ししてるから大丈夫。
ママは? ママは幸せ?
お月様の国ではパパに会えた?
あたし、ママに会いたいようー!!
「みゃー」
そのとき、お月様がチカッと光った。
そしてあたしの視界が、急にぐるぐる回りだす。
え? なに?
何なのこれ。