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「モカちゃん、そんなところにのぼっちゃ駄目よ。片瀬くん、これ落ちたよー」
ミネちゃんは、それを拾い上げて画面を見て、そして眉を寄せる。
「片瀬くん」
「なに? 美音」
「このカクテルの意味、知ってて作ったの?」
「え、『完全なる愛』じゃなかったっけ」
「基本的には『出来ない相談』の方が多いって書いてあるわよ、ここに。一般的にはスマートな断り方だって。
酷いわー、片瀬くんの方が私に付き合ってっていったくせにー!」
「違うって違うって!!」
なんだかシュラバがはじまったみたい。
カタセくんが困ってるからいい気分。
あたしのミネちゃんを、いっつもいっつも奪うんだもん。
平日の夜なのに遊びに来るなんてルール違反よう。
「違うって。今日がそのブルームーンの日だから、一緒に見ようと思って。
ほら、このカクテル綺麗だろ? ムードでるかなって」
「何か言いくるめられてる気がする」
「そんなことない! ほら、見ようぜブルームーン。綺麗だよ?」
ベランダへの扉を開けて、2人は肩を並べてお月様をみる。
ふーんだ。すぐ仲直りしちゃった。つまんない。
「にゃおん」
「モカちゃん。ほら見て。とっても綺麗」
うっとりとした顔で、ミネちゃんがあたしを抱き上げる。
今日のお月様、まんまるだ。
お月様にはねぇ。ママがいるんだよう。
まんまるの日はにっこり笑ってる気がして嬉しいの。
大好きよう、ママ。