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その時、公園の外から二つの声が同時に響いた。
「清ちゃーん!」
「ええーん。モカちゃんどこぉー」
ミネちゃんの声だ。
途端にあたしの耳はピンと張って、セイシロウくんの脇を通り過ぎて公園前の通りまで出た。
ああ、フラフラのミネちゃんがやってくる。
あたしのこと捜しに来たのね?
一緒に遊んでくれるのね?
やっぱりミネちゃん、大好きだよう。
動きの遅いミネちゃんの後ろから、小走りにやってくるのは女の子。
笑顔が可愛くって、走ってると言うよりは飛び跳ねてるって感じかしら。
うっかりしてると踏まれそう、なんて思っちゃう。
「美佐!」
「清ちゃん」
あたしの後ろからセイシロウくんがその子に声をかける。
その、セイシロウくんの嬉しそうな顔。
ああこの人、この子の事好きなんだって、すぐに分かった。
ミサちゃんは息を切らしながら、セイシロウくんの腕を触った。
ああー。大変!
あなたニンシンになっちゃうよう!!
「みゃーみゃーみゃー!!」
折角そう教えてあげるのに、ミサちゃんって子はキョトンとした顔であたしを見ると、
「うわー可愛い!!」
って言って近付いてきた。
目の前に手を伸ばして、
「触っていいかにゃー」
なんて言う。
にゃーとか言わなくても、ちゃんと通じてるわよ?
目を輝かせてあたしをみるミサちゃん。
さ、触らせてあげてもいいんだけど、ニンシンってのはうつったりしないのかしら。
あなたさっき、セイシロウくんに触ってたじゃないの。