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「お前、名前なんて言うんだ?」
「みゃー」
モカよ。
お前って気易く呼ばないで?
「可愛い声だな。こっち来いよ」
「にゃー」
嫌よ。
だって、触られるとニンシンになっちゃうんだもん。
「来ないなー」
そう言って、セイシロウくんは一歩近づいてくる。
あたしは、触られてみたいような触られたくないような、不可思議な気分で後ずさりする。
セイシロウくんが立ち止まると、あたしも止まって様子をうかがう。
ああなんか、いつも楽しんでる虫との追いかけっこみたいよ。
なんであたしの方が遊ばれているみたいになってるの。
何だか悔しいわよう。
「ま、いいか。変なネコだな」
セイシロウくんはそれ以上追いかけては来ずに、また入口まで戻ってしまった。
セイシロウくん、あんまり怖くないんだけど。
あの子たちが言ってたの本当だったのかなぁ。