※捏造100%




──おれは、母さんが大好き
──そう、でもあたしはあんたが嫌いよ
──誰よりも、ね!
「うわぁっ!?」
文字通り飛び起きた。全身が汗をかいていてベタベタして気持ち悪い。それ以前に嫌な夢だった。
アイクは手を頭に添えた。何故かしきりとそこが痛む。きりきりと何かに締め付けられてはいるような、すべてを絞り取られそうな感覚。こんなことは初めてで、アイクは恐怖を僅かに抱いた。
「アイクー、起きてるー?」
「…っあ、あぁ」
コンコン、と軽やかにノックをされ、こういうところに育ちの良さを感じるなとアイクは思った。ノブを回して部屋に入ってきたのは戦友であるマルス。王族の血をひく由緒正しい王子だ。
「こんな夜中にどうしたんだ、マルス」
「ん?いや、なんとなく君の部屋が目に付いたから。眠れなくてね」
笑ったマルスの目元には確かに、薄いが隈が出来ていた。アイクはマルスを見る。自分より幾段も色素の薄い水色の髪の毛や、女のように細い腕。睫毛に縁取られた淡い蒼の瞳に小さな顔。
マルスがアイクの視線に気付いた。顔を持ち上げ傾ける。どうかしたの?と聞けばアイクは頬を赤らめた。凝視していたものに不意打ちで視線を合わせられると混乱するものだ。試合でも、こんなときでも。
「アイクはどうして起きてたのさ」
「、俺、は…」
嫌な夢を見たから。恐かったんだ。怖ろしくて。眠れない。寝たくない。夢を、見たくないから。
そうとは言えず曖昧に笑って誤魔化した。
「アイクにも眠れないときがあるんだね」
「お前は俺を何だと思ってるんだ」
「アイクはアイクだよ。うん」
「…意味が分からん」
マルスが優しく微笑んだ。その視線はすべてを見透かしているように見えて、アイクはそっぽを向く。それでも尚感じる視線に恥ずかしくなりそのまま毛布に潜り込んだ。
「もう寝る」
「え、もう?アイク?」
「………っ」
毛布の上から子供にするように撫でられた。何度も何度も。
無言でアイクは手を差し出して自分の横を叩いた。
「…寝るんなら、勝手にしろ…」
「じゃあ勝手にするよ」
そういってアイクの横に潜り込む。人の体温がじんわりと背中越しに伝わり、また耳まで朱くする。
初めてだ。人の体温を感じながら眠るなど。温かさを逃したくなくて、アイクはもぞもぞと動いてマルスに密着した。
「本当に君、どうしたの?」
「何でもない!寝ろ。もう寝ろ」
「はいはい」
安心したのかすやすやと眠り出すアイク。そしてマルスは優しくまた微笑んだ。
マルスは知っていた。アイクが悪夢に怯えていることも。愛されたことがないという事実も。大切にされたことがないという過去も。心の葛藤も、全部。
その上で気丈に振る舞うアイクにひかれたのだ。今度は苦笑を漏らした。
お互い大変なものを抱え込んだものだ。



嘘つきは泣かないのだから



マル(⇔)アイ
途中描写がアイマルっぽくなったのは谷平の文才不足。誰かわけてくれ
アイクさんは幼少期に家族から疎まれていた→愛されたことがなければ愛したこともないので、マルスへの感情が何なのかわからない→友情と呼ぶのは違う気がする→もやもや→でも近くにいるとすごい安心→これが…愛?
みたいな恋愛経験値皆無なアイクさんでした











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