※倉南





先日、テストが終わった。
もう二年だし、そろそろ三年だし、受験に向けて頑張って勉強した。はずだったのに。
「なに、この、点数…」
もうびっくりするしかなかった。
数学なんてさ、とうとう50点ぎりぎりだし。理科なんてもう意味わかんなくて30点もとれてないし。
家帰んのやだなー、って周りをみたらまぁみんなも同じ様な顔をしていて、あぁって思った。そっか、みんなも悪かったのか。じゃ、テスト直しはキャプテンに手伝ってもらおう。

「…で、何で俺なの?」
「だって先輩頭いーじゃないすか。減るもんじゃないし、いいでしょ、べつに」
はい、とテストの答案をエロみさ…南沢先輩に突き出した。先輩はまた面倒なことを、みたいな目つきで俺を見た。うん、面倒くさいけど、テスト直し手伝ってほしいじゃん。
「嫌だよ、俺三年で忙しいから」
「じゃあキャプテンとかそこら辺も呼んで一斉に」
「余計面倒だろ」
「…ですよねー…」
つん、とした南沢先輩の視線がすいーっと移動して俺のテスト用紙をじっと見た。また何か罵声を浴びさせられるのかと妙に緊張したけど、南沢先輩はなんにも言わないで指ででかでかとペケ印がついた場所を指差した。
「これ、簡単だろ」
「嘘だ、だってこんなの解けないって!」
「…有り得ない」
そう言って南沢先輩はカバンを漁って筆箱を取り出した。
「しょうがないから教えてやるよ」
ひねくれた笑顔を浮かべて白紙の裏にとんとん、とシャーペンでリズムを取る。迂闊にも可愛いとか思った。
「そこ座れば?」
「…はーい」
南沢先輩がさっき指でさしたところから解いていく。
「だから、ここが展開されんだよ。お前マイナス付け忘れてる」
「あっ、ほんとだ。じゃあこっちは?」
「ここも、簡単なミス。ほら、計算間違ってる」
南沢先輩は問題用紙の隅っこにかかれた俺の計算を指で弾いた。それから正しい答えをすらすら書いて、きっと途中で俺が解らなくなると思ったらしく、簡単だけど分かり易い解説まで書いてくれた。
「お前さ、もうちょっと落ち着いて取り組んだら?そんなでかい間違いしてないんだし、全部凡ミスだぜ?」
「え、なにそれはほんとは俺が頭良いみたいな?」
「頭良いやつはそんな凡ミスしねぇよ」
ずばりと言われて何も言えなくなった。そうだよな、頭良いやつは問題ちらっと見ただけで解けちゃうもんな。
南沢先輩みたいに。
シャーペンが紙の上を滑らかに滑って、その後には黒鉛の線が残ってその形を逆さまから俺は読み取る。綺麗な白い指も、若干制服で隠れてる細い手首も、反対側から筋肉の変化を読み取る。
く、と力が入ったのか手の甲に血管が浮き出て、脈打つのが見えた。
「…なに見てんの」
「南沢先輩の手」
「…………あっそ…」
段々日が傾いて西日が差し込む。オレンジ色に染まる教室。全部が太陽の色に染められていて、動いてるシャーペンが作るわずかな影までもがオレンジ色。そこからシャーペンを動かしてる南沢先輩の手も。顔を見たらものすごく真剣な顔をして問題と向き合ってた。
止まることがない文字を書く音に、この人はほんとに頭が良いんだなぁって思った。
「できた、倉間」
「…ぇあっ、ありがとうございます」
南沢先輩がシャーペンを置いて紙を俺に差し出した。差し出されるまでぼんやりと南沢先輩の顔を見ていたがら声がうわずった。
一応手伝ってもらったので頭を下げて顔を上げたら南沢先輩はちょっと赤い顔をさせて「なんで顔見てきたんだよ」と聞いてきた。西日で充分に染められてんのに、赤いとか可愛い。
「綺麗だったから」
「…何が」
「南沢先輩が」
伏せられた目も、震える睫毛も悩ましげにひそめられた眉も、全部。南沢先輩の全部が綺麗だったから。
「……………ばっかみてぇ…」
「あだっ!?」
ごん、と割合強い力で頭を叩かれて涙が浮かんだ。何すんすか、と怒鳴ろうと(ついでに胸倉掴もうとした)顔と手をわずかに上げて、びっくりした。
あの南沢先輩が口押さえて、西日のせいじゃないってわかるほど顔を真っ赤にしてたから。
「……ばか…!」
それだけ言って俺のことなんか見ないで走っていってしまった。可愛いな、こんちくしょう。
それから慌ててカバンをひっつかんでまだ微妙に見える、走ってる南沢先輩の姿に向かって精一杯叫んだ。
「あんたのこと好きになりましたー!!!」






バカップルの兆し。
南沢先輩は頭がいいからね、きっと。
みんなのテスト直しを手伝ってくれるよ。何だかんだで。大人数でやったらグタグタに終わってマンツーマンだったらエロス突入。
倉間がまだ南沢を意識してないから、倉間と南沢の初恋物語★←←
南沢可愛い(*´`)












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