こおり

レマツ
※pixivレッド








冬のシロガネ山はコロコロと変わる天気と吹雪のせいで白い要塞となり、近づくことはおろか下山することも難しい。
「そんななか来るなんて、あなたどうかしてる」
「だって…さぁ」
雪を被りながらぼくの洞窟に入ってきたのは、エンジュジムリーダーのマツバさんだった。
「まぁそこら辺に腰掛けといてくださいよ。コーヒー入れますから」
「ありがとう、ごめんねぇ」
全っ然すまなさそうにしていない態度でマフラーを巻き直す彼を横目に見ながら、台所として使っている物陰に行きリザードンの尻尾の炎でお湯を沸かす。
「マツバさん、砂糖とか、使いますか」
「甘いのが好きだなぁ」
暗にそれはミルクも入れろと言っているに違いないと判断してコーヒーよりも多い量のミルクを入れた。嫌がらせとして甘党の僕も引くぐらいの量の砂糖も入れた。
マグを二つ持ち彼が待つ場所まで戻る。
「で、何か用でもあるんですか?」
「んー?特に無いけど」
ピカの耳を撫でながら何をしに来たのかよくわからない彼にぼくは呆気に取られた。
「…用が無いのに、こんな所まで来たんですか…?」
「うん。あっ」
するりとピカが抜け出し、ぼくの肩に乗る。
「…どうぞ」
「ありがとー」
湯気のたつマグを受け取り一口飲む。ぼくも立ったままだけれど飲んだ。ぼく好みの味。
「甘くておいしいねこれ」
「えっ」
おいしいんだ、あれ。
「…ヒビキくんが、君に会いに行けって、言ったんだ」
ヒビキという言葉にぼくは胸が詰まるかと思った。最強と言われたぼくを超えた、少年。
「ここに来るまで、すごく辛かった。でも僕の修行よりかは楽」
「なにか、見つけたんですか」
マツバさんはかなり寂しそうに笑うのだなと思った。泣きたいのか笑いたいのか曖昧な笑顔。
「…初めて吹雪を味わった。坂が辛かったし、寒い。それに、『生きる』ってことを、ちょっとわかった気がする」
生きる。なかなか難しいお題を見つけたなぁと感心した。ぼくはここで5年以上過ごしているがそんなことに目を向けたことはなかった。
「あなたってかなり不思議な人ですね」
「そうかな?御馳走様でした」
マグを持つ手は、さっきまで温かいものを飲んでいたとは思えないほど冷たく、氷のようにも感じたが、外の冷たさとはまた違う、不思議な温度だった。




左手の人差し指のみめちゃくちゃ冷たいです。夜寒い。こたつから出られない。
そんなマツバさんも大好きです^^
こたつで糖度の低い(本人たちはめっちゃラブラブしてると思っている)いちゃつきを披露してほしい。みかん剥きあってればいい


[ 1/5 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -