※マツバ過去捏造
※すごく暴力的








叫び声は出なかった。それでも赤い体液は流れる。切れた皮膚の隙間からどくどく流れる赤い血。
振り上げられた銀の凶器が、少ない灯りのもとで煌めいた。
凶器を握っているのは、一族の長で、長い白い髭がとても印象的な好々爺。みんなからじっさまと呼ばれて親しまれている、偉いひと。
切りつけられているのは僕の従兄。僕に勉強を教えてくれたり、遊んでくれるひと。とっても優しいひと、なのに。
また光が小さく煌めいて、突き刺さる。
声は聞こえない。荒い呼吸は何百回と聞いた。
じっさまが手を止めた。小さな声だけど、確かに聞こえる。
僕は細く開けた扉の隙間にへばりついた。
知りたい。
「…お前は…愛さないのかね…?」
「あいせ、る…わけ…なかった…んだ、じっ…さまっ」
ごほごほと咳き込むにいちゃん。じっさまは黙る。
「…ホウオウは、存在するとしても、しんじないか?」
じっさまがぼそぼそと喋る。それでも言葉の重みは理解した。
「…はい…」
「一族の掟も、か?」
「……………はい」
お兄さんが返事をするまで、すごく長い時間かもしれないし、とても短かったかもしれない。そこから先の時間の感覚を僕は正確に覚えてない。
銀が煌めいてじっさまの目が反射した。とても冷たくて、なんとも思ってない目。
ゆっくり振り下ろされたように見えたのに、小刀が風を斬る音はやけに生々しく聞こえた。
「…おわりだ」
そう言ってじっさまが手を離した。銀の小刀は突き刺さっていた。
お兄さんの心臓の上に。
しばらくしてじっさまが立ち上がった。つられて僕も走り出す。吐きそう。早く自分の部屋に戻りたい。
ふらつく足で走って、廊下を何回も曲がって部屋に転がり込んだ。
がくがくと全身が震える。吐き気も強くなった。でも頭が麻痺したみたいに動かない。動きたくない。吐きたい。
なんとか体を起こした。次の行動は喉に指を突っ込むじゃなかった。
涙を流して声を出して、泣いた。



僕はそれを愛と呼べたのだろうか



マツバさんの一族はへんなところで掟がきつそうだ
ホウオウを愛し、信じ、尽くし、ともに生きるとか
裏切りは死なんだよ。だからお兄さんころさ(ry


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