何も覚えてはいない。
───兄さん、遊ぼう
何も、思い出せない。
───…マツバ

ちぴちぴと朝から小鳥が鳴きさえずる。そんな微かな音に気分を害して布団から起き上がる。おかしな寝方をしたせいか首が痛かった。
はっきりしない脳みそにイライラしつつ、洗面台に向かい、ばしゃばしゃと水をかける。
「ゲンガあー、タオル持ってきてくれないかなー?」
水の冷たさに驚いて早々に顔を水につけるのを諦め、ゲンガーにタオルを持ってくるように頼む。ポタポタと顔から水が滴り落ちる。粒が落ち、張った水の上で跳ね、波紋を作り出した。
揺らめく水面に映る自分の顔。
───……マツバ
「にい、さん…」
自分に似ている兄の顔。いや違う、僕には兄さんなんていない。いるのは僕だけだ。
ふるふると痛む首を振り、水気をとる。とたとたとゲンガーがタオルを持ってきてくれたのと同時だった。




マツバさんの兄さんは旧マツだと嬉しい(自宅設定


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