あ、とかう、とか。そんな簡単な単語ですらない言葉を洩らすのでさえ、今の僕にはとても困難なことだった。
一言で言うなら何がなんだかわからない。そしてどうすればいいのかも。僕はどうすればいい?
他人事のように言うなら、もう諦めろ。
「ぎっ、」
新しい言葉を発する事が出来たよ。わーい。なんて、喜べるはずもなく。吐き気しか催さないよ。
「おーお、苦しんでるねぇ」
「っ、」
さっきからやたら聞こえる、くたびれたような声もどうでもいいよ。早く、楽にして欲しい。
僕を、早く「ころしてほしいか?」
わぁお、シンクロしちゃったよ、嬉しくないな。吐きそう。
「ぐぅ」
「吐くなよ?お前モルモットなんだから」
「…げぇっ」
「あちゃ。あとで俺様が怒られるだろが」
声が不機嫌そうなセリフを楽しげに言ってる辺り、ここに居たくないって気持ちを増幅させる。
「ま、ここ数日なんも食ってねぇようだし?胃液しか出てないから俺様許してあげるぜ」
「ぅ、っ」
寝転がされたままの状態からいきなり持ち上がった。なんだなんだ。せめて状況を説明してほしい。
「猿轡、と目隠しどっち取る?」
猿轡をはずされた。自分の胃液でおかしな匂いを放つそれを取ると新鮮でもない空気が入ってきた。
「どっ、ちも」
「贅沢なやつだな、お前」
それでもきちんと目隠しもとってくれた。眩しい位の人工的な光が四方八方から降り注ぐ。当たり前か。部屋の中だ。
「…なに、どこ」
「んー?俺様はしらねぇよ」
僕を抱き抱えてる、紫色した髪の毛男。印象。ひょろ長い。ひげ。タレ目。
「だれ」
「俺?ラムダ」
おかしな名前。
「ラムダ、ぼくをころせ」
「やぁなこった」
即答。少しは考えてよ。ころしてよ。
そう思ったのが伝わったみたいで、ラムダはちょっと嫌そうに眉をひそめた。
「じゃあ提案してやる」
一応聞いてあげる。お姫様抱っこされたままの形でラムダは指を一本伸ばした。
「一、ここで死ぬまでモルモット」
「しにたいけど、やだ」
僕、平仮名発音しかできてない。足をぐらぐらさせながら二つ目を待った。
「二。自力でここから逃げる」
「ぼくじゃ分が悪い」
視界がぐるぐる回る。気持ち悪い。また吐きそうだ。
力の籠もらない腕をラムダの首に回す。今気づいたけれど、白衣の研究服の下から『R』っていう文字が見えてる。
「じゃあ三だ。俺と一緒に、逃げる」
「それでいい」
ラムダ、ロケット団裏切って平気かい?なんて聞いてやらないけど、本気を出した獣みたいな目に免じて、信じてあげるよ。




千里眼狙われた→ちっちゃい頃遊んであげたよしみで助けるんだせなラムマツ。そしてマツバさんを一回も呼んでいない奇跡
マツバさんは腕の感覚を懐かしがってればいい
ラムダはマツバさんを覚えてるけどマツバさんはラムダ?そんな奴いた?みたいな人。それなんて若アルツ?


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