ないものねだり


臨→正





ないものねだりをします。俺はあの子が欲しいです。あの子が欲しくてたまらないのです。

些細な事だった。
街中を歩く君の姿があまりにも楽しそうだったから。君の隣を歩く友達が、憎くて憎くて憎くて。
3年という長い時を一緒にした。愛を囁いた。手をつないだ。身体を繋げた。寝顔を見た。泣き顔も、悔しむ顔も、怒る顔も。
でも。
あんなに、楽しそうに、安らかに、儚げに笑う顔だけは見たこと、なかったんだ。
別れを切り出したのは俺なのに。なんで俺が泣きそうになっているのか。
あの子は俺が好きだったのに。俺が居ないと生きていけないように、心の奥底に入り込んだはずなのに!!

雨が降った。
新宿を濡らすようにばしゃばしゃと。俺は立ち尽くした。傘なんて持ってなかったし、動いたら叫んでしまいそうだったから。
あの子は、と視線を動かして行方を追った。笑っていた。俺と同じで傘は持っていなかった。なのに笑っていた。
愕然とした。どうして、と思った。
でも、わかってしまった。
あの子は、あの子の心は、自由だからだ。
声をくれた。身体をくれた。頭をくれた。でも、心をくれたことはなかったと。
だから笑っていられるのか。心は俺のじゃなかったから。
俺はあの子に心をあげてしまったから。

ないものねだりをします。俺はあの子が欲しいです。あの子の心が欲しくてたまらないのです。



ふったけど後ろ髪ひかれまくりな臨也さん


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