処方箋


※病んでる






臨也さんが手に傷を付けるようになった。最初は、からかっていた頭の悪そうな女子高生にナイフでやられた、とバツが悪そうに言うだけだったのに。
いつからだろう。
臨也さんが死にたいと言い出したのは。
何でだろう。
臨也さんがカッターで自分の腕をどこか嬉しそうに切っているのは。
なぜ。わからない。知らない。
黒いコートを捲れば白い包帯が、臨也さんの日に焼けていない肌を際だたせる。段々と、臨也さんの腕の包帯が多くなって。楽しそうに「血が出た」と言う臨也さんは泣いていた。俺はそんな臨也さんを見て、何がしてやれるのか、わからなくなった。
憎むべき相手が、愛すべき相手が。壊れてしまった場合。俺はどうすればいいんだろう。
「臨也さん」
「ま…さおみ、くん…」
みて、ち。
嬉しそうに差し出された手。ぼたぼたと血は遠慮なく溢れて、床を汚す。
相変わらず臨也さんは笑ったままぽろぽろと大粒の涙を流していた。
痛いなら、喚けばいいのに。
笑いたいなら、笑えばいいのに。
泣きたいなら、泣けばいいのに。
俺しか居ないんだから。
俺が居るから。
何が邪魔するんだろう。臨也さんの感情を。気持ちを。
愛を。
気付いたら抱きしめていた。首を守るようにして。
「まさおみ、くん?」
臨也さんが言葉をこぼすたび、喉が上下する。頸動脈から流れる血は手首に繋がる。その血液が溢れたままの腕を臨也さんは曲げて、俺を抱きしめ返した。
どくどく
どくどく
「臨也さん」
「なぁに」
「俺が居るから」
「…うん」
「だから」
何を言おうとしたのかはわからない。でも何か言うはずだった。
けれど言葉を探してみても、こういう時に限って出てこないから、ためらいもせずに口を塞いだ。
子どもがやるような、唇をぶつけるだけのキス。
これよりも深いキスも知ってるし、もっと甘い、くすぐったいようなキスもできるのに。俺にはこれが限界だった。臨也さんを慰められないから。
「どう、したの…さ…らしくない、じゃない」
唇を離すと臨也さんの目から涙が止まっていた。ただ単に涙が出なくなっただけかも知れないけど。
これでいいんだ。
「俺があんたの処方箋、ですよ」



1日何回、寂しくなったら服用してください
注:過度な摂取は依存を引き起こします




意外と自殺志願者の正臣話は見かけたので、臨也さんにやらせました←
案外臨也さんの方が脆いような気がしたんで←←←
存外正臣の方が芯は強そうだし
話の結末は俺も予想外★←←←


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