愛をたむけてさようなら


3月は卒業式がある。今の3年がいなくなったら次は二年が最高学年となるシステムだ。
臨也は真夜中の校舎に侵入した。ここに3年間通っていたのだが案外感傷は浮かばなかった。そういう人間である。
履き古した上履きは今日でお役御免となり持ってきていない。当然土足だ。
こつこつと白いリノリウムの床をリズム良く蹴る。それは反響を伴ってやがて聞こえなくなった。
臨也が3の2の教室の前で止まった。
躊躇することなくがらりと開ける。
「あれ、来たんすか、いざや」
「…その微妙な敬語直して欲しかったなァ…」
臨也が教室に入って先ず目に付いたのは教卓でもなければ黒板でも無かった。
1人の少年だ。
しかし制服はこの高校のものだ。少年は臨也に背を向け窓に座っていた。不安定な場所に座るものだ。
「あ、卒業おめでとっす、静雄にも、そう言っといてよ」
軽い口調で臨也に話しかける。仮にも在校生なのだから少なくとも臨也より年下だろう。
「あのさ、少しは年上を敬いなよ正臣」
「いきなり俺をセフレだとか言いふらした人に言われたくないんだけど」
「はは…まぁいいじゃん。ほんとなんだし」
正臣が振り返る。染められた髪の毛が白い月明かりに反射して美しく輝いた。妖しい魔法のようだ。
「…バカじゃないすか、あんた」
「え、何で?」
正臣にバカと言われた意味がわからず首を傾げる。
「俺は臨也が嫌いだ…いきなりセフレだとか言いやがるし意味わかんないし…」
「ちょっ、正臣?何どうしたのさ」
仮にも身体を繋いだこともある関係でもあるし一時は恋人のようにもなったのに、いきなりの罵声である。
「…好きなのに…」
「…!」
正臣は入学してすぐ臨也と知り合い関係をもった。
ただ、臨也から愛の言葉は沢山貰ったが正臣は返していない。
恥ずかしいから。
嬉しいから。
泣きたくなるから。
「初めて好きになったのに…素直になりたかったよ…臨也っ」
「…」
ごめんね、と臨也は呟いた。
臨也に非があるわけでも、増して正臣に非はない。
「卒業なんか、嫌いだ…居なくなんないでよ…俺…」
「…好きだよ…」
「!」
自分でも酷いと思った。
正臣をつなぎ止めたいだけだから。
「嘘吐き…早くいっちまえ…臨也なんか、大っ嫌いだ…!」
正臣が背を向ける。
嗚咽が聞こえる。洟を啜る音も。
臨也が動いた。
この空間に来た時と同じように音を立てて扉をしめる。
あぁ、これでいいのだ。
正臣は顔を上げる。
ぼろぼろと流れる涙は正臣の顔をどんどん濡らしていく。
全てを吐き出すように正臣は泣いた。愛してると、呟き続けた。
居なくなる人間に、忘れないでと、強く想った。
白い月はただ黙って闇夜を彩る。
独りの夜が始まるのだ。



泣くな、強くあれ。





セフレという単語を使いたかった^p^←
学パロも好き。
ショタパロも好き。
パロネタ大好き!←←←←←


- 13 -


[*前] | [次#]
ページ:




第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -