青に優しさがない代わりに赤に罪を押し付けた


今日の空に雲は一つもなかった。
昨日はうざったいくらいの羊雲があってさすがに引いたけど。
逆に何も浮かんでないってのも何だかなぁ。
ぶつぶつと呟きながら人気のない道を紀田正臣は歩いていた。
手にした携帯には今しがた撮った空の画像が次々と映し出されていく。
静雄さん、今日はどれを気に入るかな・・・?
正臣は知らず知らずに口角が緩んだ。
携帯で空の写真を撮ることは静雄と付き合いだしてから始めた正臣の趣味だ。
静雄に何が好きかと聞かれて思わず空が好きだといったら静雄も好きだといい、今までに何枚か写真を撮ったといわれ、じゃあ俺も撮ってみようかな?と始めたのである。
そうして毎日数枚自分で気に入った写真を選び静雄と見せ合いっこをする。
それがささやかな正臣の楽しみであった。
せまい道を抜ければ静雄と待ち合わせをした場所に出る。
思わず小走りになり路地を出た。
「静雄さん!!」
見慣れた背中を見つけて正臣はその背中に抱きついた。
嗅ぎなれた香りが正臣の鼻孔を満たす。
「なんだ、正臣か」
「なんだとはなんですか!!俺怒っちゃいますよ」
顔はまだ静雄の背中に埋めたまま会話を続行する。
かっこよかった。
夕陽をバックに立つ静雄はどこか昔の映画の俳優のようで、違う星の人間みたいだったのだ。
せめてもの照れ隠し。
ぐりぐりと頭を静雄の背中になすりつける。
夕陽が似合うとは、またベタな・・・。
臨也さんとは正反対だ。
そう、臨也さんとは・・・。

静雄におぶられたままの正臣は一言も発しなかった。
何かを言おうとすれば考えが横に入りどうにも言葉がまとまらず結局かすかな、あ、という声しか出なかった。
(臨也さんにまた頼った・・・・・・どうすれば、どう言えばいいの・・・・?)
「ねぇ静雄さん・・・・・・?」
「ん、どした?」
(あぁだめだ、怖い怖い怖い怖い助けて誰か、)
「俺・・・・」
(誰かって、誰だよ? でも、誰でもいい。俺をここから)
「俺・・・・・っ」
(俺を自由にさせて)
「・・・またっ・・・臨也さんにっ・・・」
(ここから出して)
見下ろした地面はどことなく夕陽の色に赤く染まっていて、それは何だか罪を犯した人間をさばく地獄の色に見えて、俺はやっぱり赤く染まった静雄さんのシャツに顔をうずめた。
どこにも自分の逃げ場がないような、そんな気がした。


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