イライラする。

このイライラの原因が目の前のこいつだと思うと更にイライラする。そして私がそんな状態にもかかわらず必ず奴は聞いてくるのだ。



「あれ、玲名!そんな怖い顔してどうかしたの?」



ほらみろ。
また今日も。



「‥うるさいっ!!お前には関係ない!!」
















(また、やってしまった‥)

ベッドに転がったまま、じぃんと微かに痛みを残す右手を天井に向けた。

ヒロトはなにも悪くない。毎回私が一方的にヒロトの言動にイライラして、それに気づかれるのが嫌で手が出てしまう。そんなつもりじゃないのに。



「このままではヒロトに嫌われてしまう‥」

(あっ、)



そうか、私は。



(ヒロトに嫌われるのが怖いのか)



そう気がついたがそれでは自分のイライラはなんだと言うのだ。イライラするくらいなら嫌われた方がいっそスッキリするはずなのに、嫌われたくないなんて。



「わからないな‥」



胸のあたりがモヤモヤして言葉では言い表せない気持ちだ。

ああ、また、イライラする。

ゴロン、と寝返りをうったと同時に部屋のドアが勢いよく開いた。来訪者は勿論、



「玲名っ!みんなでトランプやってるんだけど玲名も‥って、‥玲名‥なに、怒って、」

「お前と言う奴は‥本当に‥っ!!!!!」

「え、ちょっ!待って‥!」




おひさま園に鋭い張り手の音が響きわたった。







恋に気付くのはもう少し先のお話







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