「ねぇ、チェレンは好きな人、いる?」 いきなりの彼女らしからぬセリフに思わずコーヒーを吹き出しそうになった。 なんだいきなり、と視線を向けてみれば当の本人は真っ直ぐ前を見据えていた。その視線の先にはトウコとトウヤがバトルをしている最中で、あぁ成る程‥と再び視線をベルの方へ戻した。 とうの昔に気付いていたことだった。 「トウヤが好きなのか」 独り言のように呟いてみればベルは眉毛をハの字の形にして顔を真っ赤にさせた。わかりやすいなぁ、とまた飲みかけのコーヒーを口に含むと横からベルの蚊の鳴くような声が聞こえた。 「どうしてチェレンには伝わってトウヤくんには伝わらないんだろうね」 そんなの、ぼくがいつもキミを見ているからに決まってるじゃないか。‥最も、キミはいつもトウヤばかり見てるから知らないだろうけど。 「さぁ、トウヤがトウコばかり見てるからじゃないの」 叶わないとわかって、ぼくはキミに意地悪を吐いた。あぁそんな泣きそうな顔をしないで。 [*前] | [次#] |