チェレンがかまってくれない。


別に今に始まったことではないし、倦怠期とかそう言うのでもなくこれはチェレンの性格の問題であって。兎に角自分の時間を大切にするチェレンはそれを邪魔されることを極端に嫌う。

以前も本を読んでいて構ってくれないチェレンにちょっかいを出し続けていたら、彼の逆鱗に触れてしまい数日間まともに目もあわせてくれなかった。

そして、今回はと言うと。

調べたいことが出来たと大事な彼女(自分で言うのもなんだが)をほったらかしで図書館に通いっぱなしなのだ。難しそうな本を真剣な目で見つめるチェレンの目の前に私は座っている。


(私のこともあれくらい真剣に見つめてくれたらいいのに‥)


そうは思えど、チェレンがこちらを向くはずもなく。



「あーあ、トウヤのところに遊びに行こうかな‥」



つまらなさが頂点に達し独り言のように呟いた。チラリとチェレンの反応を伺うが眉一つ動かさない。

その代わりに彼もまた独り言のように「あと2ページだから」と呟いた。



(‥ちゃんと聞いてるんだ)



その言葉は、私の膨れた頬を緩ませるのに十分だった。






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