新学期がはじまりしばらくたった頃、学生にとってはちょっとしたイベントである席替えが行われることになった。

担任が席に見立てた升目にランダムに数字を割り振り、そのあと生徒たちがくじ引きをするいたってシンプルなものだ。

半分ほどの生徒がくじ引きを引き終わったころには、うわっ一番前だ!とか誰々ちゃんと席が近い!やら随分と教室は賑やかになった。

‥次は秋がくじを引く番だ。






「一之瀬くん!何番だった?」


くじを引き終わった秋は俺の視線に気付くと笑顔で寄ってきてくれた。


「俺は10番だから‥窓際の一番後ろだね」


秋は?と聞いてみれば少し残念そうな顔をして番号を教えてくれた。


「残念。一之瀬くんの斜め前の前だね」


どうせなら一之瀬くんの隣が良かったなぁ、と言う秋には悪いけど、実はちょっぴり嬉しかった。



(隣だと見てるのばれちゃうもんな‥)



黒板を見るふりをしながらそっと秋を見ることの出来るこの席は俺の特等席になりそうだ。








期間限定特等席






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