帰り道のことだった。

お兄ちゃんの練習を手伝いに帝国に行く予定のあった私は、友人との別れ際に予期せぬ出来事に見舞われた。





「これ、源田くんに渡して欲しいの!絶対よ!」




それだけ言うと、彼女は私に断る暇も与えず封筒を押し付けて走り去っていった。

お兄ちゃんが帝国に通っている関係で、私も帝国に行っていること知られてからこの手のお願いはよくされるようになったが、いつもはやんわりと断っていたのだが。


(よりによって、源田くん‥だなんて)


彼女は親しい友人なので渡してあげるべきなのだろう。だが、しかし、どうしてもそれを拒否する自分が居た。

でも、彼と自分は付き合っているという訳でもない。

渡すべきだと自分の中の良心が訴えかけても、このまま自分が持っていて友人には渡しておいたと嘘をつけばいいという考えが脳裏をかすめる。

そんな自分がなんだかとても汚い人間に思えて少し泣きそうになった。










「春奈、」



はっと顔をあげると、
そこには。




「源田‥くん‥」




どうやら歩きながら考えているうちに帝国に着いてしまったらしい。





「どうした、なにかあったのか」




彼の口から今一番聞きたくなかった言葉を投げかけられ、私は大声で泣いてしまった。

いきなり泣き出した私にオロオロする源田くん。ごめんね、でも、やっぱり









あなたを一番すきなのはわたし






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