「秋ー、入るよ?」



いつものように秋の家に行くと部屋に居るからどうぞ、と秋の母さんに言われ俺は慣れた足取りで秋の部屋に向かった。

一応ノックをしてみたが返事がなくそっとドアを開けてみるとベッドに秋の姿を見つけた。



(なんだ、寝ちゃってるのか)



待ち疲れてしまったのか、それとも少し仮眠をとるつもりだったのか、近付いてみると秋は規則正しい寝息を立てて肩を上下させていた。




「‥睫毛、長いんだな‥」




こんなに間近で、しかもじっくりと秋の顔を見るのは久しぶり‥いや、初めてかもしれない。



(今ならキスしてもバレないかも‥)



そう考えた瞬間、自分の顔が熱くなっていくのがわかった。

なにを考えてるんだ自分は、と頭から振り払おうとするが一度意識してしまうとそう簡単に忘れられる訳もなく。




「ごめん、秋‥」




そう呟いたあと俺はそっと秋の頭に手を添え、額に軽く口付けた。

















「あれ‥一之瀬くん‥?」



秋が目を覚ましたのはそれからほんの数分後のことだった。もしもすぐに起きてしまっていたら、俺は間違いなく秋の顔を直視出来なかっただろう。
起こしてくれれば良かったのに!と言う秋をなだめながら、俺は先ほどの行為は自分だけの秘密にしようと堅く心に誓うのであった。



(でも‥)









いつかは堂々と





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