『秋、誕生日おめでとう』


『ありがとう、一之瀬くん』


『これ、プレゼントだよ』


『わぁ!ありがとう。開けても良い?』


『うん、もちろんだよ』




綺麗な花柄のリボンをほどくと、中からはかわいらしいピンがひとつ。




『‥どうかな?秋に似合うと思って』




そう言う一之瀬くんは柄にもなく照れていて、目をキョロキョロさせていた。




『すっごく嬉しい!ありがとう』




私の言葉に一之瀬くんも嬉しそうに微笑んだ。

‥それが一之瀬くんとアメリカで過ごした最後の誕生日だった。








* *







「そのピン、まだ使ってくれてたんだね」





月日は流れ、思わぬ形で私はまた一之瀬くんと再会を果たすことが出来た。
慌ただしいなか、ようやく訪れた2人の時間に一之瀬くんはそう言った。






「もちろんだよ」

「‥嬉しいな」

「これは私のお守りだから」






私はそっと自身の前髪をとめるピンに触れた。






「お守り?」

「そう、お守り」







一之瀬くんが居なくなってから、ずっと一之瀬くんの変わりに私の側にいてくれた、大切なお守り。







「ちゃんと願いも叶えてくれたんだから」







一之瀬くんは一瞬不思議そうな顔をしたけれど、すぐにそっか、と笑ってくれた。











もう一度、逢いたい






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