「大丈夫?一之瀬くん」




心配そうに覗き込む秋が額のタオルを冷たいものに変えてくれた。相変わらず身体は熱いが、額だけはひんやりと心地よかった。




「ごめん、秋‥」

「うんん。それより早く良くなるように頑張らなきゃ」

「そ‥だね‥」




咳は治まったがまだしゃべるだけでも喉が痛い。付きっきりで看病してくれている秋はお粥作ってくるから、と部屋を出て行った。

季節の変わり目に滅多にひかない風邪をひいてしまい、キャラバンに居るわけにもいかず、俺は今秋の家でお世話になっている。これでも秋の看病のお陰で大分楽になってきた。




(秋は相変わらずだな‥)




アメリカに居たころも俺がちょっと膝を擦りむいただけでも誰よりも心配して治療してくれたっけ、と昔のことを考えているとドアをノックする音が聞こえた。




「一之瀬くん、お粥出来たんだけど食べれそう?」

「うん、ちょっとは食べないと元気出そうにないしね」




良かった、と秋はサイドテーブルに小さめの土鍋が乗ったおぼんを置いた。





「熱いから気をつけてね‥。はい、あーんして」





レンゲに少量のお粥をすくい取り、ふーふーと秋は冷まして俺に差し出した。





(手を繋ごうとすると怒るけど、こういうことは平気なんだよな‥秋って)





咀嚼しながらちらりと秋の方を伺うと小皿にお粥を取り分けていた。





「おいしい?一之瀬くん」

「うん‥美味しいよ」

「早く練習に復帰できると良いね」





秋の言葉に一瞬もう少しこのままでも良いな、と思ってしまったのは言うまでもない。






きみを独占





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