『春奈ちゃんは本当にお兄ちゃんが大好きなのね』 いつもお兄ちゃんの側を離れない私を見て施設にいた先生は口々にそう言った。 そのたびに私も 『うん!お兄ちゃんがだいすきなの!』 と答えていたことを思い出す。 いじめっ子たちには金魚の糞だとか言われて泣いてしまったこともあるけど、そのたびにお兄ちゃんが身体を張って私を守ってくれた。 私のせいで傷だらけになったお兄ちゃんが痛々しくてまた泣いてしまったときは、お兄ちゃん困ったように笑ってたっけ。 泣く私をおんぶしてお家まで連れて帰ってくれて、私は温かいお兄ちゃんの背中が大好きだった。 中学生になった今でもそれは同じで、私はお兄ちゃんの背中を見ると安心感を覚える。 私の方が早く来た成長期のせいで昔のように下からお兄ちゃんの背中を見上げることは今では無くなってしまったけれど、それでもお兄ちゃんの背中は大きかった。 「お兄ちゃん」 「春奈。どうしたんだ?」 「ちょっとだけ、お兄ちゃんの背中、貸して?」 「‥‥?あぁ、」 不思議そうに後ろを向くお兄ちゃんの背中にそっと寄り添った。 (あったかい‥) その背中を押し出して、 試合頑張って、と送り出すのは私の仕事。 変わらないもの [*前] | [次#] |