子供のころ、ウルビダと二人で夜そっと園を抜け出したことがある。

ジュースを入れた水筒と、大きなクッキーを鞄に詰めて俺たちは近くの公園へ行った。
大人も寝静まる時間帯に子供だけで外にいると言う事実だけでも充分に好奇心を満たしたものだ。

二人でブランコにのって、色々なことを話した。





『ウルビダ、クッキーたべる?』

『うん、たべる』

『じゃあちょっとまっててね』




俺はクッキーを取り出していつものように食べやすい大きさに割ってウルビダに差し出した。





『ねぇグラン』

『んー?』





隣のブランコにいるウルビダはクッキーを片手に空を見上げていた。





『グランはいつもクッキーを割ってくれるけど』

『うん』


『お月様を割ったのは、誰?』






そう言って空を指差すウルビダに俺も上を向いてみるとそこには綺麗な半月が浮かんでいた。















「‥‥‥ってことが昔あってさぁ」

「まじかよ!あのウルビダがかぁ?」

「今となってはあぁだけど小さい頃は素直で可愛かったんだよ」

「人は見かけによらねぇってのは本当だなぁ」

「まったく「随分と楽しそうだな、グラン」

「‥‥!」






後ろから聞こえた凛とした声に、思わず背筋が凍った。

ギギギ、と言う効果音が相応しいくらいぎこちなく振り返ると、信じたくはないがそこには紛れもなくウルビダが居た。





「‥‥や、やぁ‥ウルビダ‥」

「どうしたグラン、顔色が悪いじゃないか」

「ま‥まぁ、ね‥」

「私が熱をはかってやろう‥ちょっとこっちに来い」

「え、いや‥遠慮し「来い」




「‥‥‥‥‥‥‥はい」











‥無論この後、俺はウルビダに張り手を頂いた。







昔話は慎重に






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