「ウルビダ、花火大会に行こうよ」

「断る」





俺の方を見ることもせずウルビダは即答した。だがこれは想定内のこと。こんなことで引き下がるようではウルビダとデートなんて到底無理だ。





「そんなこといわずに。せっかく父さんがウルビダの浴衣を用意してくれたんだから‥」

「‥お父様が?」





その言葉に初めてこちらを向いたウルビダに俺はしめた、と思った。

‥いささか悲しい気分も残るが。





「そうだよ。せっかくの父さんの気持ちを無駄にするわけにもいかないし」






行こう?と再度誘ってみればウルビダはお父様のためでお前の誘いに乗ったんじゃないからな、と浴衣を手に取り部屋を出て行った。

なんだか最近ウルビダの扱い方がわかってきたような気がする。





「さて、と‥」





準備が出来るまで俺は外で待つことにした。




‥‥








「似合ってるよ、ウルビダ」




ウルビダが出てきたのはそれから一時間も後だった。流石は女の子、支度には時間がかかる。




「‥‥‥動きにくいし、慣れないな‥」





少し窮屈そうにしているウルビダだが、普段とは違い髪を結い上げているウルビダは色っぽくて一層大人びていた。






「ほら、花火はじまるよウルビダ」

「まてグラン、歩きにくいんだ‥この格好‥わっ」

「危ない!」





つまずいたウルビダの手を俺はとっさに掴んだ。




「‥またつまずいたら駄目から、手を繋いで行こう?」

「‥‥‥」





ウルビダから返事は無かったが手は離さなかったので俺たちはそのまま花火大会の会場へと向かった。



(本当は俺の用意した浴衣だって知ったらウルビダ怒るかな‥)



俺の半歩後ろを歩くウルビダを盗み見て、もう少しこの状況を楽しむことにした。








今はまだ、内緒






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