いつも屋上で歌を唄っているあの子を見ているのだ好きだった。鬱々と陰湿な雰囲気を纏ったあの子が好きだっだ。 出会いは偶然。 授業をサボるために屋上に来てみれば先客が居た。フェンス越しに運動場を見つめるその子はを何かの歌を口ずさんでいた。 ボクが居ることに気付いてもその子は構わず唄い続けた。恐らく日本語ではないその歌は耳馴染みがよく透き通ったその子の声がぴったりだった。 それからと言うものボクは毎日屋上へ足を運んだ。あの子も決まっていつも同じ場所に居た。未だに会話をしたこともなく名前も知らない。 ただ歌を聴いて帰る。 それだけだった。 互いに深入りしようとはしなかった。 ある日のことだった。 いつも通りに屋上へ行くとあの子の姿がなかった。代わりにやけに運動場が騒がしいと思い上から覗いてみると見覚えのある綺麗な金髪が血に染まっているのが見えた。 あぁ、やはり逝ってしまったのか。 何度も聴いているうちにフランス語だとわかったあの歌のタイトルは、 さよなら世界 [*前] | [次#] |