それから数時間。 隊長を探しに外に出るのも億劫で僕はそのまま書類の処理に追われていた。 「ただいまイヅルー」 「隊長‥!」 大量の書類と暑さでイライラしていたのもあって今日こそはこの狐をひっぱたいてやろうと席を立ち右手を振りかざそうとしたのだが。 「はいこれ、イヅルにお土産」 「‥‥は?」 「まぁ開けてみ」 先に市丸隊長から長細い箱を渡されついそちらに気をとられてしまった。 言われるままに包みを開けてみると中からは綺麗な箱に入れられた扇子がひとつ。 「これ‥!」 「イヅル、暑いの苦手やもんな。気付くの遅なって堪忍。ボクのと色違いなんよ、それ」 「‥‥っ、ありがとう‥ございます‥」 暑さのせいか、先ほどよりも頬が熱い気がする。 「さて、仕事するで」 「はい‥!」 これだかこの人のことを嫌いになれない。 (いや、寧ろ好きかも) [*前] | [次#] |