完成した相合い傘を見てイヅルは静かに幸せを感じた。










‥‥‥‥





「ん‥あれボク寝てしもうたんか」





市丸が目を覚ましたとき辺りはもう暗かった。





「!‥イヅ、」





目の前の人影に気付き名前を呼びかけたが、すやすやと眠っている恋人の姿に市丸は声を潜めた。


(起こしてくれたらえかったのに‥)


そう思いながらとりあえず帰る準備をしようとノートを手に取ったとき、ふと自分の字ではない文字に気付き市丸は目をやった。

そこには、自分が落書きで書いた相合い傘に付け加えられたイヅルと言う文字とその下に添えられたずっと一緒です、というメッセージ。

市丸は几帳面な字で書かれたそれを指でそっとなぞり、教科書と共に鞄にしまった。






「イヅル、起き。一緒に帰ろう」

「ん‥‥」









君が完全に目を覚ましたらまずなんて言葉を掛けようか。

この幸せはどう言葉にすれば一番君に伝わるだろうか。






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