ただ一人を除けば誰も居ない夕日に染まった教室。





「市丸先輩‥寝てる?」






昼間に今日は臨時で部活があるから先に帰っておいて下さいとメールを送ったらすぐさま教室で待っているから、と返事が来たので部活が終わって急いで来てみればこれだ。





(まぁ‥待っててくれたのは嬉しいけど)





呆れ半分嬉しさ半分と言った表情を浮かべ、イヅルは市丸の前の席の椅子に腰掛けた。

よくよく見ると市丸が突っ伏している下には教科書とノートが広げてあった。大方宿題でもしていて眠くなったんだろうなとイヅルは思う。





「あれ、」





何気なく市丸のノートに目をやるとそこには俗に言う“相合い傘”が隅の方に書かれていた。





「なんで市丸さん自分の名前しか書いてないんだろ‥」





イヅルが言うように相合い傘の左側にはギン、と書かれているものの右側は空白のままだった。

‥隣には自分の名前があっても良いのに、と自然に考えてしまった自分がイヅルは少し恥ずかしかった。

確かに市丸先輩と自分は付き合ってはいるが、自分なんかに市丸先輩は勿体無いことくらい百も承知だ。







‥それでも、


イヅルはおもむろに机の上に置いてあったシャーペンを手にとり、相合い傘の右側に自分の名前を書きこんだ。






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